どのぐらいのレベルで言葉のやり取りができれば「会話ができるようになった」と言っていいのか
先日妻と酒を飲んでいると、「息子はコミュニケーション能力が高くなったよね」という話になりました。
発語の兆候すらない時代が長く続き、奇声から気持ちを読み解こうと試みたこともありました。
絵カード・写真カードを使った時代、「自分でしゃべれないけど、他人が話していることはかなり理解できているようだ」という段階、「しゃべりより文字の読み書きの方が好きみたい」と気付いて「ひらがな・数字」「アルファベット」「漢字・カタカナ」で意思疎通ができるようになった段階、急にしゃべり出したけれど母音優先で妻とぼく以外は何を言っているのか聞き取れない段階、子音がそれなりに発語できるようになって第三者に要望・意向を伝えることができるようになった段階…などなど。
地元のコミュニティーFMに、幼稚園・保育園の年長組の児童が「将来の夢」を語るコーナーがあります。あらかじめ書いた作文を児童が読むのではなく、FM局のパーソナリティーが児童とやり取りしながら進めていく形式で、妻と一緒に聴いているといつも「健常児の5、6歳はスゴい!」という感想を言い合うことになります。
息子が成人しても、あの年長組の子のようなフリートークをしている様子は想像もできません。無理なんじゃないかと思います。
ただ、障害児を育てる上で、健常児の健常児のお子さんと比べることに意味はありません。よく考えれば意味が少しはあるのかもしれませんが、あえて断言します、ありません。
比べるべき対象は「1年(1カ月、1週間)前のわが子」です。比べてみて成長が確認できれば「よし」とします。そんなようなことは、以前も書きました。
お子さんのすごく小さな成長を探して見つけて家族で喜び合うのが、障害児と楽しく暮らすコツなのだと思います。
冒頭にも書きましたが、息子のコミュ力は少しずつですが着実にレベルアップしています。
しかし、「息子さんは会話できますか?」と問われた時に、どう答えたらいいか。
即答できません。そもそも「会話」ってなんだ?
「言葉のやり取り」はできるのですが、それを「会話」と呼ぶにはちょっと違和感がありますので、会話はまだできません
丁寧に答えるとすると、こんな感じです。
「障害児の親は理屈っぽくて付き合いにくいなぁ」と疎まれるかもしれません。でも、簡単に答えることができない質問だと思うんです。
具体例を挙げます。
今日は学校どうだった? 何が一番楽しかった?
体育でボール遊びをして楽しかった
どんなボール遊びをしたの?
ドッジボール。一回もボールに当たらなかったよ
これが、ぼくが考える「会話」です。
しかし、実際にはこうです。
今日は学校どうだった? 何が一番楽しかった?
体育した!
体育で何をしたの?
ボール遊びした!
楽しかった?
楽しかった!
どうでしょう? これを「会話」と呼んでいいのかどうか、微妙なところですよね。
これまでの息子の「言葉の進歩」については、こんなふうに細分化して見ています。
①発語ができる
②2語文3語文が使える
③要求・希望を伝える
④独り言(頭に浮かんだことを口にする)
⑤自発的に「気持ち・感情・受け止め」を口にする
ことし4月、初めて自分の感情を自発的に口にすることができました。
「会話ができる」というのは、イコール「雑談ができる」なのだと思います。
質問に答える形でなく自発的に自らの感情を口にすることができたというのは、「雑談=フリートークができる」ようになるための大きな第一歩ではないでしょうか。
しかし、こんなふうに「会話」の定義と「会話ができる・できない」ということをあらためて考えていくと、意外な「気付き」がありました。
障害がないとされて社会生活を送っている大人にも、「会話」ができない人は結構いますし、雑談がで生きなくても社会生活を送ることに支障はないかもしれない、と。
事務的なやり取りや要件を伝え合うだけなら簡潔かつ適切な物言いができるけど、話が雑談っぽくなると急に黙り込んでしまう大人(ぼくの経験では圧倒的に男が多い)、3人以上で雑談しているのに他の人の話を聞かずに自分の話したいネタに強引に持っていこうとして、うまくいかないと不機嫌になる大人、楽しく雑談をしていると話に割って入ろうとするんだけれど、その場の話題にかみ合っていなくて「独り言」ぽくて対処に困る大人…などなど。
大学時代、理系の学部だったこともあって、こういう「かみ合わない独り言」を積み重ねる学生はよく見かけましたし、社会人になってからも、同僚や同業他社の方々にもおります。やはり、ほぼ全員が男ですが。
などといろいろ勘案するに、重度自閉症・中度知的障害がある9歳の男の子にしては、上出来すぎるほど「言葉のやり取り」ができていますし、「うちの息子は会話ができます!」と言っていいのかもしれない気がしてきました。
「フリートークができる重度自閉症児」、これも今後の目標としよう。
息子がフリートークする姿は全く想像もできませんし、高望みであることはわかっていますが、このスキルが身につけばきっと異性ウケもいいでしょう。挑戦する価値はあります。
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