生まれて初めて自分から「楽しかった」と言ってくれた

息子は昨年秋から自転車に乗るのがマイブームで、学校から帰ってくると、家の周り200メートル四方を自転車でぐるぐる回るのが日課となっていました。

 降雪期の中断を経てもブームは終わっておらず、先月から再開しています。

 わが家には、妻のママチャリと息子用と計2台の自転車があり、3人で近所を回る時は、ぼくが自転車に乗り、妻が歩いてコースを先回りするーというパターンが多かったです。

 同級生の女の子が遊びに来てくれた際には、キックスケーターでわれわれ3人に付き合ってくれることもありました。

 息子は200メートル四方のコースをずっと回り続けても飽きることがないようですが、息子以外の「付き合わされる側=健常児(者)」は、すぐに飽きてしまいます。当然のことです。

 単調さへの耐性が強いと自負するぼくでさえ、1時間を超えるとさすがに参ってきて、「別のところを走らない?」と息子に提案してみます。

 ほとんどの場合、提案は却下されます。

 ただ、走行するコースをぼくが無理やり変更しても、最初はかんしゃくを起こして泣いたり叫んだりして抵抗するのですが、最終的には渋々ながら付いてきてくれます。

 そんなふうに息子の出方をうかがい、なだめすかしながら、自転車で走るエリアを少しずつ広げていきました。

 まず、買い物をするという名目で近所のスーパーまで向かい、次は息子が通う小学校に隣接する公園。この二つに慣れたら、小学校よりほんの少し距離が離れた「お城がある公園」「駅の近くにあるとても広い運動公園」…。

 障害の性質上、息子は自発的に新しいことに挑戦したり知らない場所に行こうとしたりしないため、彼の世界を広げていくには、周囲の人が意図的に働き掛けることが必要になります。

 今の息子にとっては「大きなお世話」なのかもしれませんが、いずれは彼のためになると信じて、乗り気ではない息子をあちこち連れて行っています。

 そんな流れから、先週、ぼくが休みで妻が用事で出掛けている時、「自転車に乗りたい」と言ってきた息子に、「いつもと違う場所に行ってみよう」と提案してみました。

 息子はこの時、なぜか嫌がりませんでした。

 さすがの彼も、いつもの200メートル四方が少し飽きてきたのかもしれません。

 息子に「いつもの違う場所」と提案はしましたが特に計画はなく、駅の地下通路をくぐり、テキトーにウロウロしていたら偶然、サイクリングロードの出発点に行き当たりました。

 サイクリングロードは、かなり昔に廃線となった鉄道の線路跡に整備されたもので、車で横切ったことはありますが、自転車で走るのは初めてでした。

 言葉で教えたわけではありませんが、普通の道路と違うと分かったのか、サイクリングロードで息子はいつもよりスピードを出していました。

 知らない道なのに、臆せずどんどんと進んで行きました。

 そんなふうに1時間ほど走り、家の前の道路を走っている時、息子は驚くべき言葉を口にしたのです。

まっすぐ行きたい! 楽しかった!

 「まっすぐ行きたい」は、家に寄らないで、家の前を通り過ぎて自転車で別の場所に出掛けたい、という意味だと分かりました。

 「楽しかった」と自発的に言ったのは生まれて初めてです。

 これが、どれだけ画期的なことか。

これまでのやり取りでは、こんなふうに誘導しないと言ってくれませんでした。

今日は体育の授業があったんだってね。何をしたの?

跳び箱した!

跳び箱、うまくできた? 頑張った?

頑張った!

体育、楽しかった?

楽しかった!

 しかも、いつものルーティーンではなく、新しいことを提案して、それを気に入ってくれて、「楽しかった」という気持ちを自ら口にしたのです。

 「いつもと違うことをするのもいいな」と思うことは、彼にとって、視野が広がることにもつながるはずです。

 これは自転車を買わなくては。3人で自転車に乗って出かけなければ。

 とと用のママチャリをすぐに買いに行き、桜が満開で絶好の晴天に恵まれた土曜の昼、3人でサイクリングロードを走りました。

写真=赤谷サイクリングロードを走る息子。この日はデビュー戦ということで5キロ地点で引き返しましたが、いずれは終点を目指します=2021年4月2日、新潟県新発田市

 最高でした。

 このサイクリングロードは、晴れた日の休日の鉄板レジャーになりそうです。

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