支援級の児童にキレて暴言を吐いて暴力を振るった兵庫県姫路市の39歳男性教員と沖縄県本島中部の女性教員は、教職に就く前から障害者への差別意識があったのだろうか

兵庫県姫路市の小学校で、特別支援学級の担任をしていた30代の男性教諭が児童に対し、「生きる価値がない」などと暴言を繰り返したり、体罰を行ったりしていたというニュースがありました。

 Yahoo!ニュースで最初に読んだ時は、言葉が軽くて考えが浅くて大人としての未熟な人間が間違って教師になってしまって不祥事を起こしてクビになるという「ありふれた事件」だと思っていましたが、地元紙・神戸新聞のサイト「神戸新聞NEXT」の記事を読んで、そんな生やさしいものではないことが分かりました。

 記事から暴言の部分の一部を抜粋します。

「こんなやつらに教える意味ありますか。ほんまにこっちまで頭おかしなりますわ」
「生きる価値なし。死ぬしかない。お前はどうしようもない。早く転校しろ。早く出て行ってくれ」

神戸新聞NEXT「暴言・体罰繰り返した教諭を懲戒免職 児童に足かけ転ばせる、別の男児には 『消えろ』」より引用

 記事には、この39歳男性教諭(9月21日付で懲戒免職)のもっとひどい暴言と体罰が表にまとめてあります。

 抜粋した2つの短い暴言には、この39歳男の「教養」「人柄」「品格」がにじみ出ています。

 「こんなやつら」という言い方に、支援学級に通う児童たちを人間として低く見ており、「こっちまで頭おかしなりますわ」という言い方には、支援学級に通う児童たちは「頭がおかしい」という認識であることが分かります。

 「生きる価値なし」「死ぬしかない」という言い方には、他人の生死の価値を判断して相手に伝えることができるだけの万能感を持った、自らを「神に近い存在」であると思い込んでいるふしがあることが分かります。

 「早く転校しろ」「早く出て行ってくれ」という言い方には、自分が教師に向いていなくて指導力がないことを認めているのに、自分が職場を去るのではなく児童を追い出そうとする身勝手な思考の持ち主であることが分かります。

 記事には、この39歳男が体罰と暴行を繰り返した背景についての兵庫県教委の分析も載っています(太字は筆者)。

 男性教諭は同校の金管バンドを熱心に指導。最近は新型コロナウイルスの影響で発表の場がなかったという。
 県教委は「金管の練習をしても発表できないことに悩む中で、自己コントロールができなくなったのでは。…」としている。

神戸新聞NEXT「暴言・体罰繰り返した教諭を懲戒免職 児童に足かけ転ばせる、別の男児には 『消えろ』」より引用

 コロナのせいですか…。脱力感しかありません。

 兵庫県教委の見立て通りだとすると、重度自閉症・中度知的障害があって支援学級に通うわが息子と比べ、かなり自己コントロールのレベルが低いようです。

 この39歳男に、ABA(応用行動分析)に基づく療育を施すセラピストはいなかったのでしょうか? 何とも不幸なことです。

 神戸新聞NEXTの別の記事暴言・体罰を同僚が7回も指摘、校長見過ごす 元教諭に確認せず「信頼していた。認識が甘かった」には、さらに衝撃的な記述がありました(太字、改行は筆者)。

 同校では、元教諭に特別支援教育の中心を担ってもらおうと18年度以降、同学級の担任を継続して任せていた。
 本人も「自分には合っている」と周囲に話していたという。
 校長は取材に「…(元教諭を)信頼しており、認識が甘かった」と話した。

神戸新聞NEXT暴言・体罰を同僚が7回も指摘、校長見過ごす 元教諭に確認せず「信頼していた。認識が甘かった」より引用

 どこから突っ込んでいいやら…。

 記事によると、体罰や暴言はこの兵庫県姫路市立城陽小学校に赴任した2018年度から始まっているため、教師としての資質に著しく欠く言動は「新型コロナウイルスにより金管の発表ができなくて自己コントロールができなくなったため」でないことは明白です。

 それなのに当の39歳男は、自分が特別支援学級の教諭に「合っている」と自己分析し、体罰と暴言を目撃した職員が3年前から7回も管理職に報告しているのに校長が「信頼している」とコメントしているわけです。

 この39歳男の暴言を借りると、まさに「ほんまにこっちまで頭おかしなりますわ」って感じです。

 しかも、学校、教育委員会という組織としての対応も最悪だったようです。

 学校に子どもを通わせる親としては、たくさんいる教職員の中にこういう問題のある人物が混じっていることがあるのは理解しています。問題が起きれば騒ぎや被害が小さいうちに収拾を図ればいいわけです。

 トラブルを早期発見して解決する管理部門が機能していないというのは、ー教師の資質といった限定的な問題ではありません。39歳男よりも、校長の方が罪が重いと思います。

 管理職として一般の教員よりも高い給料をもらっているのに管理できてなかったわけです。極論ですが、この校長が不在で教育委員会直結だった方が健全に運営されたでしょう。

 神戸新聞NEXTからまた別の記事を引用します(太字は筆者)。

 委員会では「なぜ、女性職員の訴えを見逃したのか」という点に質問が集中。市教育委員会の担当者は「校長の認識が甘く、事実確認が遅れた」「保護者に校内の様子がきちんと伝わっていなかった」とした。
 元教諭は職員に自身の行為を口止めしたり、「管理職に言ったのではないか」などと問い詰めたりしていたといい、「管理職以外にも、内部通報ができる窓口があることも十分周知できておらず、通報者の擁護もできていなかった」と述べた。

神戸新聞NEXT「特別支援学級での暴言・体罰問題「放置していたのでは」 市議、校長らに厳しい批判」より引用

 口止めするぐらいですので、元教諭の39歳男が自分の言動に問題があることを認識していたことがこれで分かります。「社会的に非難される悪いことを、悪いことだと分かっていて続けていた」ということです。

 どこまでもクズな感じの39歳男ですが、学校のトップである校長も、「認識が甘かった」で済ませられるのはおかしいと思います。

 こういう認識が甘い人は校長職に向いていません。

 元部下の39歳男の暴言を借りると、まさに「(校長を務める)価値なし。お前はどうしようもない。早く転校しろ。早く出て行ってくれ」ってところでしょうか。

 支援学級の児童に対する暴言では昨年、沖縄の小学校でも問題になっていました。

 地元紙・琉球新報の記事「支援学級の子『邪魔だと思う人は手を挙げて』 教員が不適切発言 ショックで休む児童も」から引用します(カッコ、太字は筆者)。

 本島中部にある公立小学校クラス担任の女性教員が(2020年)6月、普通学級と一緒に授業を受けていた特別支援学級の児童らが騒いだため「うるさいと思う人、邪魔だと思う人は手を挙げてください」と児童らに呼び掛けていたことが、(9月)8日までに分かった。…
 授業中に支援学級の児童らが騒ぎ、教員が発言して挙手を求めた。教員は、手を挙げなかった普通学級の児童に「あなたも支援学級に行きなさい」と言い、手をつかんだという。

琉球新報の記事支援学級の子『邪魔だと思う人は手を挙げて』 教員が不適切発言 ショックで休む児童も」より引用

 兵庫県姫路市の39歳男のような「徹底した人間のクズ」という印象ではなく、この女性教員の場合は「衝動的にキレてしまった」という感じがして、同列に扱うのは気の毒な気もします。

 なのですが、これはすごくまずいですよね。支援級の児童だけでなく、通常級の子たちにも深刻な「心の傷」をつけてしまっています。

 「インクルーシブ教育」という言葉はご存知でしょうか。「聞いたことはあるけど意味は知らない」といったいったところでしょうか。

 と、ここまで書いた後に、Google検索で「障害者.com」の記事を見つけ、印象ががらっと変わりました。

 ライターの「遥けき博愛の郷」さんが書いた「『邪魔だと思う人は手を挙げなさい』~支援学級生への暴言と交流学級の落とし穴」です。

 「教師X」というのは、琉球新報の記事に出てくる「本島中部にある公立小学校クラス担任の女性教員」のことです。一部を引用します(太字は筆者)。

 教諭Xはかねてより支援の児童を疎んじていたようで、別の日には腕を掴んで教室から放り出そうとしていたとクラスメイトから明かされています。
 一部の児童は親に「担任が支援の子へきつく当たる」と話しており、それをきっかけに教諭Xの行いが明るみになったのです。
 教諭Xは「指導の一環であり、悪意を持ってやったわけではない」と弁明していますが、悪意がないということはすなわち「授業を円滑に進めるのが正義!それを邪魔する支援ガ〇ジを追い出すのは指導の一環!」と純粋な指導方針として考えていた節があるともとれます。

障害者.com「『邪魔だと思う人は手を挙げなさい』~支援学級生への暴言と交流学級の落とし穴」より引用

 「前科」があったんですね。ここまで凶悪な人間だとは、琉球新報の記事だけでは分かりませんでした。

 「遥けき博愛の郷」さんも指摘していますが、この女性教員が「悪意がなかった」と言っているところがポイントだとぼくも思いました。

 「私生活で悩みがあって、ストレスを支援級の児童にぶつけてしまった」「支援級の児童とどうしても気が合わなくてイライラしてしまった」と言うなら、反省してやり直すことは可能だと思います。

 ですが、記事になったようなことを本当に「指導の一環であり、悪意なく」行ったのだとしたら、反省してやり直すことは不可能でしょう。そこまで決定的に認知が歪んでいる方が教職を担うのは危険であり、一刻も早く公教育から身を引くべきです。

 本人は「『指導の一環であり、悪意を持ってやったわけではない』と弁明したほうが罪が軽くなる」と軽い気持ちで言っている可能性も捨て切れませんが、そうであれば、極めて悪質です。

 記事によると、2020年9月時点では「体調不良を訴え休職中」とのことですが、もしすでに復帰しているのであれば、自らの信念に基づいた「支援学級に通う児童」に対するヘイトスピーチを、弱い立場に置かれた児童たちの前ではなく、大人がたくさんいる「公の場」で行っていただきたいものです。

 ここで取り上げた「兵庫県姫路市の39歳男性(元)教員」と「沖縄県本島中部の女性教員」、お二人は教員になる前から障害児(者)に対して差別意識があり、「徹底的にいじめてやろう」と考えていたのでしょうか。

 たぶん、そうではないと思います、というか、そう思いたいです。

 障害児(者)と身近に接する機会がほとんどないまま教職に就き、通常級でキャリアを重ねて指導力に自信をつけていく中で、支援学級の児童たちと関わる機会が初めてできて、うまく対処できずに悩んでいた時期があったのかもしれません。

 挫折感を味わったのかもしれません。

 発達障害児の場合、発達の仕方にデコボコがあって、デコボコの具合はその子によってみんな異なります。何かに過敏だったり特定の物事へのこだわりが強かったりしますが、そうしたものが急に消えていくこともあります。

 ずっと一緒にいる親ですら分からないことがたくさんあるのに、平日に数時間だけ接する教員に分かるわけがありません。当然のことです。

 ただ、障害に関する知識があれば一定程度の対応は可能でしょうし、個々の子どもの特性や対処法については、親に聞くのが一番の早道です。

 このお二人はなぜ、他の教員や保護者たちと一緒に悩みながら「よりよい教育」を行っていくための方策を探っていくのではなく、子どもたちに差別感情をぶつけ、子どもたちの心だけでなく自分自身のキャリアにも傷をつけてしまったのか。

 障害児を傷つけ、差別するために教員になったのではないのであれば、どこで道を誤ったのか、ぜひ語っていただきたいところです。

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