「ビールと祭りと療育と」なママのある一日

このブログはABA(応用行動分析)による家庭療育を実践している妻が主宰者で、ぼくはサイトを維持するための技術的なサポートをするという役割分担で始めました。
 そして、ぼくはこれまで、「家庭療育を手掛けていない側の親」という立ち位置で、重度自閉症の息子と関わる中で気付いたことを主なネタにしてきました。

 今回は初めて、妻(ママ)を主人公に書いてみます。

 妻は交友関係が広いこともあって常にぼくよりも忙しく、週2、3日のパート勤務に家事、育児・療育をこなす傍ら、いつもLINEやメッセンジャーの返信を書いたり、Wordで書類を作ったり、イラストを描いたり、会議に出席したり、会議の延長として居酒屋でビールを飲んだり、スナックで焼酎を飲んだりしています。
 彼女をみていると、フルタイムで働くぼくの方がラクだなとホントに思います。

 ということで、いつもパワフルで素敵なわが妻の「ビールと祭りと療育と」的な、ある1日を取り上げてみます。
 この日はこんな予定でした。

①午前中:ABA療育仲間で定期的に開催している「SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)」に参加(新潟市中央区)
②午後:パート先の書店で絵本の読み聞かせ(新発田市)
③夕方:月岡温泉「どんど祭り」にたいまつランナーとして出場(新発田市)

 いつも忙しい妻でも、ここまで予定が重なることは珍しいです。ぼくはかなり前から会社に休みを申請し、車の運転&息子の世話などで終日、サポートする構えでした。
 妻も、体力を温存するため、前日夜に入っていた居酒屋のパート勤務を休みにし、睡眠を十分にとって万全の態勢で臨むつもりでした。

しかし、この日の朝、

飲み過ぎた〜。眠い。気持ち悪い

えっ、なんで〜?

 前の日の夜は家族3人で自宅で夕食&晩酌をし、ぼくは早い時間に息子と添い寝をし、妻も「ドライヤーで髪を乾かしたらすぐに寝る」と言っていました。
 しかし、妻は髪を乾かしている最中、先ほど晩酌のつまみにした生わかめ(近所のスーパーで160円でした)が残っているのに注目し、「食べ切ってしまおう」と思い立ち、日本酒も飲み始め、「何時に寝たのか覚えていない」ぐらいの量を飲んだそうです。

写真=この日のSSTに向けて妻が作った「課題ノート」。課題をクリアできたらシールを貼り、あらかじめ決めた数以上のシールを獲得できたら公園に連れて行くーというルールです。「鼻をほじらせない」というのは何よりも最優先されます=2020年2月、新潟市中央区

 それでも妻は、息子とぼくより早く起きて炊飯器のスイッチを入れ、SSTの会場に持って行く昼食用のおにぎりを大量に完成させておりました。とても立派です。

 SSTの会場でも、鼻をほじろうとする息子の様子を察知しては瞬時に阻止し、「パプリカ」に合わせて踊るダンスをしっかりこなし、息子以外のお子さんたちにも笑顔で応対しておりました。とても立派です。

 そして、SSTを終えて、読み聞かせをする書店に向かう車内、

ダンスの時にゲロ吐かないで良かった〜

二日酔いのせいでSSTの会場でゲロ吐いたら、永遠に語り継がれるだろうね

どういうシステムか分かんないけど、飲み過ぎた翌日は寒気がするんだよね〜。今は寒気は収まったけど、頭が痛い

システム…

(車窓を眺め)えっ、雨降ってるの?雨の中をたいまつ持って走るんだよ。意味わかんね〜

たいまつランナーは自分の意思で参加申し込みをしたんだよね

一人で家飲みしててこんな二日酔いになるって珍しいよね〜

 などと好きなことを言うだけ言ってしまうと、すぐに眠ってしまいました。

 そして、絵本の読み聞かせ。これは、SSTや月岡温泉の祭りとは異なり、仕事としてやっているものです。パートとはいえ、プロとして「結果」が求められます。
 しかし、これがまた、いつもと変わらないテンションで、うまく会場を盛り上げておりました。
 とても立派です。「二日酔いで頭が痛くてゲロ吐きを我慢している」ようには決して見えません。

 で、読み聞かせ終了後の車内、

ゲロ吐かないで読み聞かせできたよ。あたし、スゴいんじゃね?

 ええ、ホントにスゴいと思いますよ。外と内の切り替えが素晴らしいです。

 しかし、そんな彼女の「舞台裏」を常に見続け、次の会場まで車で運ぶぼくはまるで、「だらしない芸能人のしっかりしたマネージャー」みたいです。

 そして、長い1日のフィナーレを飾る月岡温泉「どんど祭り」。妻は参加する仲間と一緒に早い時間に会場へ向かったため、息子とぼくは隣の市にある温水プールで遊んで時間調整してから月岡温泉に向かいました。

 上の写真は、どんど祭りの様子です。(左)はたいまつランナーが走っているところで、スマホでの撮影だったため写真としての質は低いものの、雰囲気は感じていただけると思います。
 (右)は、たいまつランナーが会場のカリオンパークに到着し、旅館で使い古した下駄を積み上げた木組みの塔に、たいまつの火が灯されたシーンです。

 妻が参加するのは昨年に続いて2回目でしたが、昨年は雪だったため、見に行きませんでした。

月岡温泉「どんど祭り」の会場にあった電話ボックスのドアを開閉する息子
写真=「どんど祭り」が終わり、会場内にあった電話ボックスのドアを開閉する息子。祭りにも少し興味を示しておりましたが、やはりドア遊びの方が楽しいようです=2020年2月、新発田市

 この日は小雨でしたがそれほど寒くはなく、この祭りを楽しむのには絶好のコンディションだったといえます。
 木組みの塔には爆竹が仕掛けられいるようで、火が放たれると音がスゴいし、火の粉もかなり舞いました。パワフルかつ迫力があります。
 主催者側としては、火の粉が飛んで引火するリスクを考えると、この雨はちょうどよかったのかもしれません。

 息子とぼくは、たいまつランナーが通る沿道で立っていました。暗いし集団で走ってくるしで、どこにいるのか分からなかったのですが、集団の中から聞こえてきた「ママだよ〜!」というものすごい大声で、ママ(妻)の走る姿を確認することができました。

 とても立派です。ゲロを吐きそうなほどの二日酔いの人とは思えない声の大きさでした。

 彼女はたいまつを持って走って、火を放って、温泉のお湯を掛けられて、冷え切った体でバスに乗り込んで、旅館で温泉に浸かり、打ち上げと称した飲み会を楽しんでさっき帰ってきて、キッチンでこの文章を書いているぼくの目の前で焼酎のお湯割り(梅干し入り)を作って飲んで、午前0時頃に就寝しました。

 お湯割りを飲み干して、寝室に向かう直前の言葉がこれです。

たいまつランナーが出発する場所に外国人の観光客が何人かいたけど、冬なのに法被姿で火の付いた棒を持って走るなんてクレイジーだと思っただろうね。Crazy Gonna Crazy~♪

 TRFの古いヒット曲を口ずさみながら去っていきました。確かに、いろいろと立派で、かつクレイジーです。

 ようやく長い1日が終わり、日付が変わりました。今回なぜこんな文章を書いたかというのは、このブログを始めた動機ともつながるのですが、ABAの家庭療育をされている保護者の方たちって皆さん、すごくマジメで「しっかりしている」印象が強いんです。ですので、われわれ夫婦のような「マジメでなく、しっかりしていない」保護者の方が他にもおられるとしたら、「つみきの会」のようなグループに参加しようとする際に、かなりビビると思うんです、きっと。
 「こんな親でもABAを6年も続けています。それなりに効果を実感していますし、今後も続けていきます」ということを知っていただくことで、新たに療育を始められる保護者の方々の少しでも気休めになれば、という思いでおります。しかしまあ、妻がゲロ吐かないでよかった。

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