自閉症児がバスと電車に乗る話

療育手帳を持っていると、公共交通機関の利用料金が割引されます。息子の手帳には「旅客鉄道株式会社旅客運賃減額」と印刷され、「航空割引」という欄の隣には「航空割引/本人/新潟県」と書かれたハンコが押されています。ありがたいことです。

 彼の障害のレベルを考えると、運転免許を取得して自分で車を運転する可能性は極めて低いはずですので、公共交通機関を一人で使えるようになることは極めて重要です。身辺自立に向けた第一歩ともいえます。

 数年後にはそんな練習もしなければなりません。テレビ番組の「初めてのおつかい」みたいな感じに、本人には見つからないよう行動を見守る手法を考案しなければなりません。

 息子は乳幼児の頃、除雪車やトラックを眺めるのが好きでしたし、乗り物全般には一定程度の関心はあるようです。
 ただ、健常児の男の子に比べると執着の度合いが弱かったのではないかという気がします。

 「乗り物」ではなく、「ある程度の規則性を持って動く大きな機械」というふうに分類しているのかもしれません。
 そう捉えると、彼が執着を続ける「自動ドア」も同じカテゴリーに入ります。

 息子は就学前、このシリーズの動画にハマっていました。

 「wheels on the bus」というタイトルで検索すると、たくさん出てきます。
 これも、バスそのものよりも、タイヤがぐるぐる回る様子が気に入っているのかもしれません。バスについては、実物もそれなりに好きなようです。

 ただ、眺めるのが好きで興味はあっても、実際に乗るとなると話は別です。
 「初物」が苦手な自閉症児ですので、少しずつ慣れてもらわなれければいけませんし、工夫も必要でした。

コミュニティーバスのバス停とコミュニケーションを取る息子
写真=地元のコミュニティーバスのバス停とのコミュニケーションを試みる息子。何やら気に入っているようです=2019年8月、新潟県新発田市

 息子を飛行機に乗せるための準備について前回書きましたが、バスや電車に関しては、「困ったら次で降りればいいや」という気楽さがあるからか、最初に乗せる時にどんな工夫をしたのか、あまり記憶にありません。

 面白いなと思ったのは、しゃべりが少し上手になった昨年の一時期、バスや電車を見掛けるたび「バス、ベルトない!」「電車ベルトない!」と言ってきたことがありました。

 おそらく、彼の中には「乗り物=家の乗用車=シートベルトする」という常識があって、バスや電車に乗る時にシートベルトをしないことを知って違和感を抱いていたのでしょう。
 ベルトの有無で乗り物を分類する発想に驚き、少し感心しました。

 意外だったのは、動いている電車内で歩けないことでした。運動は得意なはずなのですが、歩くように促すと泣き出します。

 座席が空いていなくてつり革や握り棒につかまっている時は、ずっと無口で緊張した表情です。
 親からすれば「扱いやすくていい子」なのですが、見ていてかわいそうです。

 それほど緊急度は高くないですが、将来的にはABA(応用行動分析)的なアプローチで練習し、できるように導かなければいけません。

 現在は、電車でもバスでも、座席さえ確保できればおとなしく乗ることができます。車窓から外を眺めるのも好きなようです。
 小学校(特別支援学級)で電車に乗ってお出掛けした際も、問題なかったそうです。

 となると、対策としては「外食に行って自分の食事が出るまでおとなしく待たせる」時と同じになります。

 学校でもそうですが、やることが見つからなくてヒマになると問題行動に走ろうとするため、教科書や絵本などの「活字を読ませる」か、車窓の様子を実況中継するような感じで「常に話し掛ける」という手を使えば、1時間ぐらいは大丈夫です。

 それ以上長い時間となると、食べ物を使う、スマホで過去の家族写真を見る(最近ハマっています)、でしょうか。
 こういう時に携帯ゲーム機で遊んでくれればラクなのでしょうが、携帯ゲーム機は持っていませんし、買ったとして興味を抱くかどうか分かりません。

 そもそも、自閉症児に携帯ゲーム機を買い与えるのは療育上プラスなのかどうか分かりませんので、専門の方や先輩ママさんにご助言いただこうと思っております。

 昨年秋、天気がよくてヒマだったので休日に家族3人で最寄駅から電車に乗り、次の駅で降りて缶ビール片手に散歩しながら家に帰ったことがあります。雨が降ってきたらバス停を探してコミュニティーバスで帰るつもりでしたが、最後まで晴天に恵まれました。
 こんな感じでゆっくりと慣らしていけば、いずれ動いている電車内で歩けるようになると思います。

 地元のコミュニティーバスは療育手帳を提示すれば(介添者1人も含め)無料で乗れるので、助かっています。

 以前は「こんなバス、誰が乗っているんだろうか(失礼!)」と思っておりましたが、息子と一緒に使うようになってからは、お年寄りのお出掛けや放課後の高校生などが結構乗っていることが分かりました。
 このバスは、降りる時に乗客が運転手さんにお礼を言う習慣があって、その辺も気に入っています。もちろん、息子にも「ありがとうございます」と言わせております。自閉症児の療育にも役立つコミュニティーバスなのです。

 大都会以外では日本中どこでも似たようなものだと思われますが、バス路線がどんどん廃止・縮小されています。運転免許を返上するなどして車を運転できない高齢者はもちろん、障害者にとっても、公共交通はその地域で暮らしていく上で必要不可欠なものです。今住んでいる地域にいくら愛着があろうとも、公共交通が廃れて暮らしにくくなれば、その地域を出ていくことになるでしょう。対策が求められています。

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