3歳の自閉症児が飛行機に乗った話

自閉症のお子さんを連れて公共交通機関を使うのって緊張しますよね。「突然パニックになって叫んだり大暴れして他の乗客の方に迷惑を掛けたらどうしよう」ですとか、心配を始めたらキリがないですし。

 乳幼児を連れて電車やバスに乗る場合、そのお子さんに障害がなくても気疲れするとは思います。
 しかし、これが自閉症の少年少女だったりすると、「結構大きな子なのに何を騒いでいるんだ」と奇異の目にさらされ、しばらくすると場が「あー(察し)」という雰囲気になるパターンを繰り返すことになります。こういうのに慣れてメンタルが鍛えられていないと、なかなかキツいものがあります。

 さらに、パッと見で障害があると分かりにくい子だと、「しつけがなってない!」と高齢男性に怒鳴られる恐れもあります。
 われわれ家族は幸い、そういう方に出くわしたことはありませんが、いずれそういう場面があるかもしれませんので、切り返し方を考えておかなきゃいけません。

 だいぶ過去のことではありますが、今回は、息子と航空機を使って旅行した体験について書いてみます。自閉症がある小さなお子さんを育てておられる保護者の方には、何か参考になることがあるかもしれません。

 飛行機に乗ることが、他の公共機関より難度が高いかどうかは一概に言えません。とはいえ、飛行機と船はトラブルが起きても途中で降りることができない点で、電車やバス、タクシーよりも乗る前に「強い覚悟」が求められそうです。
 あと、座席移動ができず、乗り物内を自由に歩き回ることができない点でいえば、船よりも難度が高そうです。

 息子を連れて初めて飛行機で旅行したのは、彼が1歳4カ月の時でした。この時は、まだ自閉症の診断を受けていませんでした。

 ですのでこの時は、「一般的な」乳幼児を連れた飛行機旅行について書いてあるブログを読みまくり、対策を考えました。食事やおやつの時間を調整して、機内にいる時間に昼寝するように仕向けた記憶があります。
 機内でどう過ごしたのかをはっきりと覚えていないぐらいですので、特にトラブルはなかったのだと思われます。

 2回目の飛行機旅行は、息子が3歳2カ月の時(*1)です。すでに自閉症の診断を受け、「つみきの会」に入ってABA(応用行動分析)を使った家庭療育を行なっていましたが、一言もしゃべれず、文字も読めず、意思の疎通すら難しい状態でした。

 航空会社のクレジットカードで貯めたマイルを期限切れになる前に使い切ろうと思って企画した家族旅行とはいえ、かなり無謀な挑戦ではありました。
 しかし、半年ぐらい前から準備をしたことで、結果的に問題もなく旅行を終えることができました。

 行き先が沖縄で、新潟ー沖縄は空路で2時間40分ぐらいかかります。落ち着きがなくて飽きっぽい息子からしたら、かなり長い時間です。
 大人だって時間を持て余します。息子を3時間近くも同じ座席に座らせ続けることは、極めて困難だと思われました。

新潟空港の入り口付近を歩く息子
写真=新潟空港の入り口付近をうろうろする息子。回転ドアにご執心でしたが、飛行機そのものにあまり興味を示すことはありませんでした=2014年9月、新潟市東区

 そして、ABAの考え方も参考に、旅行の半年前に以下のような対応策を決めました。

①「空港」という場所に慣れてもらう

②写真カードを作って、訪れる場所をあらかじめ見せておき、旅行時は常に写真カードを使って「今後の段取り」を明示する


③飛行機に搭乗する直前まで、できる限り体を動かして空腹にさせておき、搭乗後に食事&おやつで満腹にさせる

 結果的に、これらの準備はすべて役に立ったと思います。
 場所に慣れてもらうため、旅行に出掛ける半年前から数回、新潟空港に連れて行きました。空港内に子どもが遊べるスペースがあって、毎回遊ばせました。

 旅行当日にはかなり早い時間に空港に入り、チェックイン直前までそこでたっぷり遊ばせました。搭乗後は、白米をぎっしり詰めたお弁当を食べさせ、妻が一緒に手遊びをしながらお菓子を食べさせると、30分もしないうちに寝てくれました。

写真=沖縄から新潟へ戻る機内で眠る息子。まさに「寝せるが勝ち」=2015年2月

 帰りの飛行機は午後出発でしたので、その日は朝から那覇市の国際通りや沖縄県庁前などを全速力で走り回り、お昼ご飯をたくさん食べた後でしたので、やはり搭乗後30分ぐらいでネンネしてくれました。

 ②の写真カードは、「新潟空港」「飛行機」は自分で撮影し、「機内の様子」「那覇空港」「リムジンバス」「宿泊するホテル(外観と内部)」「国際通り」などはインターネットで写真をダウンロードし、作成しました。

 自閉症があろうとも、しっかり準備さえしておけば何とかなります。この経験は、その後のわれわれ夫婦の大きな自信にもつながりました。

 飛行機を使った家族旅行はこの時以来していませんが、昼寝をする習慣がなくなった分だけ、今の方が面倒かもしれません。当時は言葉による意思疎通ができないゆえの奇声や大声でしたが、今は大人に注目してもらいたいがゆえに意図的に問題行動するように進化(?)しておりますので、それに見合った対処法が必要になります。ただ、彼は「ヒマでどうしようもないとあきらめて寝てしまう」という非常に素敵な特性も持っていますので、案外イケるような気もします。
 何にせよ、お子さんの障害ゆえに「楽しいこと」をあきらめない方がいいです。きっと何とかなりますよ。

 (*1)初稿では「4歳2カ月の頃」と書いたのですが、息子の療育手帳を見ていたら、計算が間違っていることに気付きました。「4歳の…」としていたタイトルも訂正しました(2020.02.10修正)。

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