息子をめぐる解明された謎と解明されていない謎

われわれ夫婦もそうですが、自閉症児を育てている保護者は日々、さまざまな「謎」にぶち当たるのではないでしょうか。
 「何を考えているか分からない」「何を言っているのか分からない」「どう対処したらいいか分からない」などなど。

 子どもとの付き合いが長くなれば、「こうじゃないかな?」となんとなく推測できることが増えていくとはいえ、解明に時間が掛かるものは結構多く、中にはいつまで経っても何のことやら全く想像がつかないものもあります。

 今、息子をめぐる大きな謎の一つが、「フリスビーを使った遊び」です。

 天候が悪くなって公園の遊具が使えなくなった昨年11月ごろから息子は、「フリスビーを投げる・受け取る」「ドアの開閉」「階段の上り下り」という動作を組み合わせた不思議な遊び(一連の動作)を非常に好むようになりました。

 汗だくになりながら、ヘトヘトになるまで1時間半近く、ずっと繰り返します。
 ぼくや妻は「フリスビーを受け取る・投げる」動作をすることで、この遊びの構成員となります。

 こんな遊び方を教えたことはありません。付き合う親の側はそれほど体力を使わなくていいのでありがたいのですが、傍目にはかなり奇異に映るでしょう。

 そんな様子をいつも温かく見守ってくださる方は、「この遊びには、何かこの子なりの深い考えなり意味が込められているのよ」とおっしゃってくださるのですが、われわれ夫婦には見当もつきません。遊びのルールも、何が楽しいのかも。

 これまでの経験から推測するに、春が近づいて天候が安定してきて公園の遊具が使えるようになれば、これまでにも彼が行ってきたいくつもの不思議な遊び同様、何もなかったかのように行動パターンから消えるはずです。たぶん「ことしの冬限定」の謎です。

 継続的に続く謎といえば、彼には「何を言っているのか全く見当がつかない」発語があります。

 そもそも、言葉らしきものが出始めたのが5歳の時と遅く、ほんの少しずつ進歩はしてきております。
 しかし、基本的には今も母音優先の発語で、普段から息子と関わりがあって慣れている方以外には聞き取りにくいと思います。

 妻とぼくはほとんどの発語を聞き取れるのですが、いつまで経っても子音が混じることがなくて類推すらできない「謎の発語」があるのです。

 昨年、3カ月ぐらい夫婦でさんざん考え、ようやく解明できたのは、

あっお、ああお あっお、ああお

 これは「横断歩道が青になった時に歩行者用の信号機から出る音」でした。車に乗っている時、街を歩いている時に突然言い始めます。
 念入りに観察を重ねた末に、妻がこの仮説を打ち立てました。本人に聞いても答えてくれませんが、おそらく正解です。

あんおえ あんおえ

 これは、ぼく(とと)に対してのみ使う発語(言葉?)です。かつては「タバコ」を意味しておりました。

 ぼくが食後に家の外でタバコを吸う習慣があった頃、家で食事を終えるたびに、息子は「あんおえ あんおえ」と言ってタバコを吸いに外に出るよう促してきました。
 習慣と規則性を重んじる自閉症児らしい振る舞いです。

 また、2人でスーパーに買い物に行き、買ったものを車に積み込んだ後も言ってきました。
 ぼくがタバコを吸っている間は、スーパーの出入り口の自動ドアで遊ぶことができるため、彼としては、なるべく時間をかけてタバコを吸ってほしいのです。

 タバコを1本吸って切り上げようとすると、「あんおえ あんおえ」と、もう一本吸うよう促してきましたし、吸っている途中でスマホに電話が掛かってこようものなら、「自動ドアでいっぱい遊べる!」とばかりに大喜びしておりました。

 そんなことが繰り返される中、ぼくは一昨年末にタバコをやめ、毎朝血圧を測るというヘルシーな生活を始めました。

 すると今度は、ぼくが愛用するオムロン家庭用血圧計のことを「あんおえ」と呼ぶようになったのです。

 何を指しているのかは簡単に分かったのですが、何ゆえ「あんおえ」という同じ発語になるのか、さっぱり見当がつきません。

(人の名前+)あんあんあんうぃあー

 これを言い始めたのは1年ぐらい前からですが、今も全く想像がつきません。

 ぼくがこの語感から連想できるは、吉本芸人の「もりやすバンバンビガロ」だけです。皆さんもきっとそうでしょう。

 ご存知なくて興味を持たれた方はこちらをクリックしてみてください。吉本興業ホームページの「もりやすバンバンビガロ」さんのプロフィール欄に飛びます。
 でも、息子はこの芸人さんのことを知らないはずですので、たぶん違います、バンバ〜ン。

 ちなみに、(人の名前)の部分には小学校の担任の先生、稀に「じじ・ばば」(実家で暮らす祖父・祖母)が入ります。
 これまた謎です。ととやママは決して、「あんあんあんうぃあー」ではないのです。

 3つの例を挙げました。息子が何か新しい言葉を発する際、最初は母音オンリーなのですが、少しずつ子音が混じるようになってきます。しかし、いずれも、いつまで経っても子音が混じる気配が全くみられないのです。

 そこで、ぼくは一つの仮説に思い至りました。

「あんおえ」「あんあんあんうぃあー」は、「あっお ああお」と同様、彼が作り出した独自の擬音なのではないか

 「ワンワン」という犬の鳴き声が英語では「バウワウ(bowwow)」となるが如しです。
 これらはもともと日本語として存在する言葉ではなく、独自に作った擬音なので、初めから子音が入っていないーと考えるとつじつまが合います。
 「この世に存在しない言葉(発語)を創作した」という点では、ヴォイニッチ手稿に通ずるものがあるかもしれません。

 このケースですと、ABA(応用行動分析)のセラピストさんよりも言語学者や文化人類学者の領域かもしれませんが、ぼくの仮説が妥当なのかどうか、専門家の方にご意見をうかがいたいところです。
 知ったところで息子の成長に1ミリも役に立つとは思えませんが、純粋な知的好奇心からとても気になります。


 …ここまでで文章をアップするつもりでしたが、一晩寝て起きてふと気付いたことがあります。考えを文章にまとめるって大事なことです。謎解きが少し前進しました。

 次の仮説が頭に浮かびました。

息子はママ(妻)に似てヒアリングが苦手なため、風変わりな擬音を作ってしまうのではないか

 母音優先でしゃべる息子の発語については、妻よりぼくの方がヒアリング能力は高いです。
 もともと妻は会話の聞き取りがあまり得意ではなく、過去に耳鼻科医院で診察を受けたことがありますが、原因は判明しなかったそうです。

 自分の父親と会話している際に何を言っているのか分からなくなり、ぼくに助けを求めることもよくあります。

 確かに、義父さんは訛りが強くて早口ではありますが、実の父娘の会話を義理の息子であるぼくが「通訳」するのは、何とも不思議なものです。

 かなり前に妻は、中学生の授業でマドンナの曲に合わせてクラスメイトとダンスをしたことがあるとぼくに話したことがありました。
 タイトルは覚えていないけれど、とてもカッコいい曲とのことで、曲の最後は、

おうおうおうおう うーうーうー

なのだそうです。ダンスの振り付けとともに教えてくれました。

 ぼくは昔の洋楽にはそれなりに詳しいと自負しているのですが、妻の説明だけでは、マドンナのどの曲なのか全く想像がつきませんでした。

 数年後、2人で雑談していて再びこの話題になった際、妻は中学時代に同級生だった親友にメールで問い合わせました。そして、すぐに返信がありました。

 このブログに「Vogue」のYouTubeリンクを張るのはこれが2回目です。確かにカッコいいし、今聴いても全く色あせていません。
 この曲をダンスの授業で取り上げた中学の先生は相当センスがいいですね。ぼくも中学時代にそんな先生と出会いたかった。

 しかし、PVを最後までご覧になるとお気付きになると思いますが、曲は「Vogue Vogue vogue…」とタイトルを繰り返し、フェードアウトして終わっています。
 これが中学時代の彼女の脳内で「おうおうおうおう うーうーうー」という擬音に変換され、20年近く記憶されてきたことになります。

 妻も息子も、耳が遠いわけではありません。特に息子は、小千谷市のオフィス兼住居で暮らしていた時代、オフィスに置いてあるファクスの「カチッ」という受信音に誰よりも早く気付き、ファクスの前に駆け寄って紙が出てくるのを待っていたほどです。

 しかし、耳の形質的な問題から2人とも「言葉が聞き取りにくい」可能性はあるのかもしれません。
 といっても、今の息子を耳鼻科医院に連れて行っても、息子はドクターに自分の状態を言葉で伝えられないでしょうから、たぶん何も分からないでしょう。

 書いているうちに少し深刻な話になってしまいましたが、謎解きとともに、彼の「聴こえ方」についても注意深くみていこうと思います。

 息子をめぐる謎の一つに、特定の場所を通過すると童謡の「春が来た」を歌い出すーというものもあります。3年ぐらい前からなのですが、われわれ家族が暮らす市内の商店街のある地点を通るときに50%ぐらいの確率で、隣の市の商店街のある地点を車で通る際にもごく稀にスイッチが入ります。冬には歌いません。春・夏・秋だけです。
 2つの商店街には、「さびれている」という共通点があります(失礼!)。しかし、さびれた商店街は他にもたくさんありますので、なぜその2地点限定なのかは不明です。いずれこれも解明していくつもりです。

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