屋根にのぼることができて「一人前の男」という風潮が雪国にはあるようだけれど…
ことし2回目の寒波が訪れ、去っていきました。
今回は、三が日のように、あらかじめ食料と灯油を確保しておいて車の運転をあきらめ昼からビールを飲みながら除雪しながら息子と雪遊びするといった悠長なことはできず、一通り「ひどい目」に遭いました。
大雪のせいで息子の学校が臨時休校になり、実家の両親に息子の子守を急きょお願いしたけれど渋滞に巻き込まれて到着が3時間ほど遅れ、バトンタッチで出勤のため駅に向かったら電車が終日運休になり、すごーくゆっくり走るバスで職場に到着したものの帰りの交通手段がなくて職場近くのホテルに泊まるはめになり、妻は仕事帰りに家の前の道路で2度も車を立ち往生させてしまいました。
家の前の道路を除雪していると顔を合わせるご近所さんたちも、表情に疲れがにじんできていました。
楽しそうなのはわが息子ばかりで、庭の雪山をそりで滑っては奇声を発し、両親の目を盗んで雪を口に含み、プラスチックのスコップで雪をかき回しては大声を上げていました。
終始テンションが高い息子の相手をしながら、ぼくはわが家の屋根雪が心配でなりませんでした。
除雪中の事故で連日亡くなる方が出ていましたし、雪の重みで空き家がつぶれたというローカルニュースもやっていました。
太平洋側にお住まいの方は新潟県というと雪国というイメージをお持ちかもしれませんが、われわれ家族が暮らす新発田市はそれほど多く雪が積もりません。
ですので、今回のように1メートル半近くも積もると、生活がマヒしてしまいます。
家の造りも道路の広さも「豪雪地仕様」ではないからです。
加えて、わが家はリフォームしたとはいえかなり年季の入った中古住宅で、強度に不安があります。
さらに、ぼくは高いところが苦手なので、屋根にのぼっての雪下ろしは極力避けたい。
夏野菜の栽培に使う支柱で下から屋根雪を突っついてはチマチマ落としていたのですが、とても間に合いません。
数年前、われわれ家族は転勤で新潟県小千谷市の事務所兼社宅に住んでいたことがあります。
小千谷市は2〜3メートルの雪が積もる日本有数の豪雪地ですので、まち全体が「豪雪地仕様」になっています。
そして、小千谷市に暮らす男たちは、仕事終わりの夜、自宅の屋根にのぼって黙々と雪下ろしをします。
「屋根の雪下ろしができるのが一人前の男」という言葉も現地で聞いたことがあります。
ぼくは、小千谷市で生まれ育って暮らしていたら生涯、「一人前の男」と呼ばれることはなかったでしょう。
まあ、そもそも「一人前の男」とみなされなくても何とも思わないでしょうし、そもそも「一人前の男」ってなんだよ。
「一人前の女」って言葉を聞いたことがないけど、「一人前」ってなんだよ。
高所恐怖症をこじらせて口が悪くなってしまいましたが、とにかく、家がつぶれるほど前に寒波が去っていき、屋根雪がとけて小さくなったことがうれしくてなりません。
今回の寒波では、ご近所さんたちの連帯感の強さを再確認する機会もありました。
うちのご近所さんは一人暮らしの70〜80代の方が多いのですが、(推定)70代の男性が、両隣の80代女性宅の玄関の雪をおろしたり、風呂釜の煙突が雪で詰まったのを直したりと大活躍していました。
妻が家の前で車を立ち往生させていた時に助けてくださったのもこの方だったそうです。
ここに引っ越してきたばかりの頃、町内会役員の70代男性に「この近所では70代でも若い方」と言われたことを思い出しました。
この界隈には「70代は80代を助ける」という美風があるのかもしれません。
ご近所さんはみんな、息子の障害のことを知っています。
理解した上で、優しく接してくださいます。
特定の飼い主がいないけれど地域住民の認知と合意の上で共同管理されている猫を「地域猫」と呼ぶそうですが、わが息子はこの界隈の「地域孫」みたいな存在なのかもしれません。
保護者はいるけれど自由気ままで十分なコントロールができていないという点でも、この呼び名がふさわしいような感じもします。
しかし、ご近所さんたちからご厚意をいただくだけでなく、われわれの方からも、何かお役に立てることがあればいいのですが。
50歳になったばかりと圧倒的に若いぼくが玄関の雪下ろしや風呂釜の煙突の修理をできればいいのでしょうが、高いところが苦手ですしね。
地上でできることを何か考えてみよう。
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