しゃべりが苦手でも文字があるさ

息子が今月上旬に医療機関で受けた心理検査の結果が出ました。検査についてはこれまで、「気付いたら『こだわり』がほとんどなくなっていました」「お子さんのDQ(発達指数)が低いからといって落ち込む必要は全くないです」というタイトルで2本も書いておりますので、今回は軽く触れる程度にとどめます。

 結果としては、前回の検査と違った形で数値が示されましたので単純比較はできないのですが、覚悟していた通りの「低い評価」でした。でも、いいんです。こんな検査はしょせん、4年ぶりに受けた一発勝負のバクチみたいなものですので。

 なぜ低い評価なのか、これも分かっております。会話によるコミュニケーションのスキルが年齢に比べて極めて低いからです。

 でもまあ、振り返ってみれば、息子は5歳になるまで「笑い声」「泣き声」「奇声」しか口から発したことがありません。

 この3種類のうちで「笑い声」の占める割合が圧倒的に多かったのが救いでしたが、当時は「この子は一生しゃべれないかもしれない」と本気で思っていましたので、現在の会話のスキルが健常児の2歳半レベル(たぶんこのぐらいだと推測しております)だとしても、親としては「しゃべれるだけで丸もうけ」なんです、ホントに。

 お子さんに現時点で発語の兆候すらみられず、同じようにご心配されている方もおられるかもしれません。
 会話によって自らの欲求や要望を伝えられなくて「かんしゃく」という形を取っているお子さんもおられるかもしれません。

 この辺はお子さんの障害の特性によって一概には言えないところだとは思われますが、わが息子の場合は、「絵(写真)→文字」という視覚を使ったコミュニケーションを行うことで補いました。

 もともと息子は、専門の先生から「視覚優先(目から入った情報を優先する傾向がある)」と指摘されておりました。
 それもあって、絵カードや手作りの写真カードを使って、「次はどこに行きたい?」「何をしたい?」という問い掛けや、「今日の予定はこんな順番だよ」という見通しを伝えるのに役立てておりました。

 で、息子が年長組の頃、「文字さえ読めれば、しゃべれなくてもいいんじゃね?」という思いもあって、妻が本格的に文字を教え始めたのです。
 そして、これまた不思議なのですが、文字を覚え始めた頃から発語が始まったのです。こんなこともあるのです。

 文字によるコミュニケーションで使った紙類をいくつかご紹介します。

「風邪を引いたら楽しくないことが起きる」と息子に伝えるために妻が書いた文書

 これは、お風呂に入った後になかなか服を着ようとしない息子に、「風邪を引いたら、君にとって楽しくないことが起こるよ」と伝えるために妻が書いたものです。「びょうき」とは「風邪」のことです。

 ちなみに、息子は健康が唯一最大の取り柄で、これまでの8歳0ケ月の人生のうち、風邪で寝込んだことは4、5回しかありません。

 それゆえ「オレは無敵だ」と調子に乗る傾向があるようにみえることもあって、それを戒めるために書きました。息子は「白米を食べる」「学校に行く」「公園で遊ぶ」ことが大好きですので、その辺の心理を巧みにくすぐった傑作といえます。

 この紙はかなり効果がありまして、何度か示すと、ちゃんと速やかに着替えるようになりました。

 次にお示しするのは、ある日の行動予定です。

ある日の行動予定を書いて息子に渡した文書

 朝、その日の予定をこんなふうに箇条書きにして渡すと、息子は安心してくれます。そして、肌身離さず持ち歩き、予定が終わるたびに細字のマジックで取り消し線を引きます。
 もちろん、朝書いた予定が変更になることもありますが、口頭で説明すれば理解してくれます。

 ただ、最近はこの文書を「証拠書類」として活用する傾向が強くみられ、「公園で遊ぶ」「(日帰り)温泉に行く」といった、息子が大好きなイベントについての記述は、「約束したんだからちゃんと守ってね」とばかりに何度も何度も何度も見せてきます。

 ですので、こうしたイベントに関しては最優先で約束を守るようにしています。重度自閉症があろうと、会話のスキルが低かろうと、信頼関係の構築は重要です。できない約束を安易にしてはいけません。

 最後に、息子が書く文字をご紹介いたします。

息子が書いた文字。判読不明な部分もある
息子が書いた「12がつ23にち」という文字

 ①は、「12がつ23にち」と書いたものだそうです。
 ②は、なんだかよく分かりませんが、居間に落ちていたので、スキャナーにかけてアップしてみました。「い」「5」「ちょ」といった文字は判読できました。

 息子は毎日、寝る前に妻と一緒に日記を書いています。息子の文字を読むスキルは当然、妻の方が上です。
 しかし、なんとも独特な形の文字です。日本語は難しいですね。いっそのこと、アルファベットを先に教えた方が、覚えが早いのかもしれません。

 医療機関から示された心理検査の結果はさんざんでしたが、学校でいただいた2学期の通知表には担任の先生の温かくも冷静な評価が記されていて、とても救われました。ありがとうございました。

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