「うんちの付いた服を隠す」という問題行動を消去するのに認知症のお年寄りへの対処法が役に立つかもというお話
夜勤明けの昼前に起きたら、洗面台で妻が息子の上着を手洗いしていました。
「この寒いのになぜ手洗い?」と思って聞いてみると、うんちが少し付いた息子の服が押入れの奥にあったのを見つけたのだそうです。
もちろん、彼の仕業です。
ずっと見当たらなかった服だったとのことでしたので、かなり前の「犯行」のようです。
息子のトイレトレーニングは最終段階の手前まで来ているけれど、何をもって「終わり」とするかが難しいーという話を以前書きました。
トイレットペーパーの使用量が多くはありますが、自分一人でお尻を拭くことはできます。うまく拭けなかったり自信がなかったりする時には、トイレからママを(たまにぼくを)呼びます。
服、しかも上着に付けたというのはきっと、トイレットペーパーでお尻をふいている時に誤って指に付けてしまい、焦って上着でぬぐったのだと考えられます。
しかし、なぜ隠す?
同じような話を偶然、ちょっと前に本で読みました。「病んだ家族、散乱した室内 援助者にとっての不全感と困惑について」(春日武彦著、医学書院)です。
読んだ時に気になってスマホにメモをしていましたので、当該部分がすぐに出てきました。
引用します(太字は筆者)。
たとえば下着を汚してしまった老婆が、それを恥ずかしいことだと感じはするものの、だからどうしてよいかわからない。そこで苦しまぎれにタンスの引き出しを開けて、新しいシャツが入れてある中に挟み込んで隠してしまう。
「病んだ家族、散乱した室内 援助者にとっての不全感と困惑について」(春日武彦著、医学書院)P175より引用
それを見つけた嫁は、「下着を汚したことは仕方ないけれど、それをわざわざシャツのあいだに隠してきれいなシャツまで汚してしまうなんて、なんと嫌味なことをするおばあちゃんなのかしら!」と腹を立ててしまうといった案配で、なまじ恥ずかしいといった感情が残っているがゆえにかえって問題行動につながっているわけである。
この本は、精神保健福祉センターでの勤務経験があって、精神疾患の当事者や認知症のお年寄りの住まいを訪問した経験も豊富なベテラン精神科医が、保健師や看護師、福祉職、行政職員といったプロ向けに実践的なアドバイスをしているものです。
「統合失調症」「認知症」といった用語が誕生する前に書かれたもののようで、今読むと表現がどぎつい印象もあるのですが、中身は実用的で読みやすく、すごく面白くてためになります。
「クレーマーの対応に頭を悩ませているサービス業従事者」や「近所や親戚の『困った人』とどう付き合ったらいいか途方に暮れている人」などなど、「福祉的支援のプロ」以外にも応用がききそうな知識が得られます。
「障害児の親」であるぼくも、この本から学ぶことが多々ありました。
妻にも早速、この部分を読んでもらいました。
なるほど、よく分かった
失敗して恥ずかしいけど、どうしていいか分からないから隠しちゃうんだね。だから怒ると逆効果で、次からもっと分かりにく場所に隠すようになるよ
えっー、さっきすごく怒っちゃったよ。学校から帰ってきたらフォローしよう
「服にうんちを付けちゃった」と言って持ってきたら、まずは褒めて、どうやったらうんちを付けないで済むかを一緒に考えればいいんだろうね
わが家では、ABA(応用行動分析)による家庭療育はすべて妻に任せていますので、ぼくがこうした「療育方針」に口を出すのは極めて珍しいことです。これが初めてかもしれません。
まさか、本で読んだ認知症のお年寄り向けの話が役に立つとは。
違いとしては、認知症のお年寄りの場合は「なまじ恥ずかしいという感情が残っているがゆえに」なのに対し、重度自閉症の息子の場合は「なまじ恥ずかしいという感情が出てくるほどに成長したがゆえに」だという点です。
一人でトイレで用を足せるほど身辺自立に自信が付いてきたのに、お尻をふくのに失敗して、うんちを指に付けてしまい、焦って上着にぬぐってしまい、指はキレイになったけど、この上着をどうしよう? 失敗したのが恥ずかしいし、ママに怒られてしまうかもしれないし…と考えたのでしょう。
これはこれで、息子が「成長した証」なのかもしれません。
想定外のことが起こって失敗し、そこからどうフォローするか。これは大人でも対処法を誤ることがあるでしょう。
自閉症の子どもも、認知症のお年寄りと同様、対処がなおさら難しいはずです。
「問題行動を起こすのには、その人なりの理由がある」ということをあらためて知りました。
次に同じようなことがあったら、怒らないようにするわ
っていうか、言葉で説明すればたぶん理解できるはずだから、学校から帰ってきたら言うといいよ。「失敗して服にうんちを付けたら、すぐに持ってきてね」って
そうする〜
しばらく様子を見てみます。たぶんうまくいくと思います。
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