コーネリアス小山田圭吾氏の大炎上から得られた「学び」⑤〜才能があるからといって周りから甘やかされ続けると精神年齢は上がらず、あとで大恥をかく

元ラーメンズの小林賢太郎氏が東京オリンピック・パラリンピックの演出担当を電撃的に解任されたのには本当に驚きました。

 昨日(22日)未明、夜勤を終えてスマホを見た段階で、「GEINOU」という芸能ニュースサイト(今回の件で初めて存在を知りました)の記事「<ユダヤ人大量惨殺ごっこ> 五輪開会式演出・小林賢太郎に浮上した『ホロコーストいじり』の過去」と、実話BUNKAタブー編集部(こちらは知っています)のツイートが結構リツイートされていました。

 その時点ではTwitterのトレンド上位には入っていなかったので「それほど広がらないのかなぁ」と思って家に帰って酒飲んで寝て、昼前に起きた時にはもう解任されていました。

 小山田氏の時は、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が5日間も粘って、2回も会見して「高い倫理観がある」などと言ってかばっていたのに、小林氏の場合は半日もしないうちに「解任」ですからね。

 こちらは外交問題に発展しかねないので対応が早かったのでしょうけど、「障害者いじめ」ごときでは外圧もなさそうだし「辞めさせないくても大丈夫だろう」と判断したのでしょうね、「高い倫理観」をお持ちの組織委は。

 個人的には小山田氏と違って、小林氏については、評価が高い有名人であることは知っていましたが、芸風や人柄については何の予備知識もありませんでした。

 かなり昔に意識高い系の同僚が「自分はいかにラーメンズの笑いを理解しているか」を得々と語ってきたことがあって、「意識高い系が好きなお笑いタレントなんだな」と認識した程度でした。

 少なくとも、ぼくが好きな落語家の快楽亭ブラック師匠の名前を挙げるよりも、「私はラーメンズが好きなんだよね」と言った方が周りから「カッコいい」「センスいい」と受け止められることは間違いないようです。

 とまあ、小林賢太郎氏のことは全然知らなかったのですが、解任を受けたご本人のコメントを読むに、すごくちゃんとした人という印象を受けました。

 今起こっていることについて、自分の言葉で語ろうという真摯さが伝わってきました。

 いかにも「誰かに書いてもらってみんなで添削しました」って感じの「整った」小山田氏のコメントとはえらい違いです。

 「過去に行ったことを反省しているのかどうか」という点では、今の小林氏の方が、小山田氏よりはるかに「高い倫理観がある」と感じました。比べるのは失礼かもしれませんが。

 小林氏と小山田氏の件について、ネットでは、「魔女狩りのように過去の言動が掘り起こされて今の基準で批判されるのはおかしい」「作品と人格は別」「こんな世の中では、無味乾燥で退屈なタテマエばかりが幅を利かせ、笑い芸人やアーティストが何も活動できなくなる」といた懸念や批判が出ています。

 「ただ逆張りして目立てばいい」というビジネス目的のタレントにはゲンナリしますが、そうした異論が出るのは健全なことですし、当然だとも思います。

 ただ、彼らが炎上で焼き尽くされてしまったのは、「地球最大の美しいタテマエ」を掲げるオリンピック・パラリンピックに関わったがゆえであって、五輪に関わっていなければ、過去の作品や人格を問われることなく「熱狂的なファンを持つ才能溢れるクリエイター」であり続けられたはずです。

 そして、五輪にコミットしたのは、ご自身で決断されたことだったはずです。

 そろそろ本題へ。

 小山田氏の炎上が始まってから、「障害者いじめ」のインタビューを載せた雑誌や、小山田氏を起用したマスコミが謝罪や釈明に追われました。

 表にまとめてみました。日付はそれぞれの会社・組織が対応した日です。

7/18
ロッキング・オン・ジャパン
「小山田圭吾、生い立ちを語る20000字インタビュー」(1993年12月)
7/19クイック・ジャパン(太田出版)
「Quick Japan 第3号『いじめ紀行』」(1995年3月)=2012年に復刊
7/19東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
開会式・閉会式クリエイティブメンバーに起用(不明〜)
7/20GIGS(シンコーミュージック・エンタテイメント)
「コーネリアス カスタム・ギター大作戦」特集(1996年2月号)
7/21NHK Eテレ
「デザインあ」(2011年〜)、「JAPANGLE」(2017年〜)に起用
不明月刊カドカワ
月カドスペシャル「フリッパーズ・ギター お洒落な不遜」(1991年9月号)
※ハフポスト、毎日新聞、スポニチ、JCASTニュースのサイト記事、Wikipediaから引用

 「ロッキング・オン・ジャパン」「GIGS」の音楽雑誌二つには、ちょっと同情しています。

 小山田氏が語った「障害者いじめ」の内容がひどいと思ったとしても、音楽雑誌としては「人気のあるアーティスト」には気を遣わなければいけないでしょうし、読者は「人気のあるアーティスト」の話を読みたいわけでしょう。

 せっかく自社のインタビューに応じてくれたのに「この内容では掲載できません」とはビジネス上、言えなかったのでしょう。

 ただ、そうやって音楽業界が小山田氏の言動を見過ごし、甘やかし続けてきたことで、自らを省みる機会がなく、精神年齢も上がることなく、今回の「破滅」に至ったといえるかもしれません。

 Quick Japan」の太田出版が謝罪コメントを出したのは意外でした。

 この出版社とこの企画をした編集者については、少し前に記事にしました。

 とんでもないです。

 毎日新聞がYahoo!ニュースに配信した記事「小山田圭吾さん『いじめ』発言 掲載誌発行の太田出版も謝罪」から引用します(改行と太字、蛍光マーカーは筆者)。

同社は、当時のスタッフに事実・経緯確認を行い、記事を再検討した結果、「被害者の方を傷つけるだけでなく差別を助長する不適切なものであることは間違いないと判断した」とした。
その上で「表現方法、記事の影響についての思慮そして配慮が足らないままに世に出たことにより被害者の方をはじめ多くの方を傷つけたことを深くお詫(わ)びします」としている。

 yahoo!ニュース・毎日新聞「小山田圭吾さん『いじめ』発言 掲載誌発行の太田出版も謝罪」より引用

 音楽雑誌ではなく、「いじめ紀行」と銘打った、いかにも露悪的な企画をして、復刊までしているのですから、音楽雑誌2社と比べ悪質ですし、今さらこんなコメントを出しても信用できません。

 ヒール路線を貫き通すかと思いきや、小山田氏と同様、「こういうポーズを取るのがビジネス上は得策」と判断されたのかもしれません。情けない。

 月刊カドカワのインタビューは、一連の「障害者いじめ」自慢記事の中で一番早かったようです。

 この件に対するKADOKAWA(カドカワ)のコメントを現時点(2021年7月23日現在)でネットで見つけることができませんでしたが、社長の夏野剛氏が五輪の無観客開催について語ったという東スポの記事「夏野剛氏 子供の行事と五輪の比較論をバッサリ『ピアノの発表会なんてどうでもいいでしょ』」[7/21(水) 23:04配信]はありました。

 引用します(改行と太字、蛍光マーカーは筆者)。

夏野氏は、共演者の「子どもの運動会とか発表会が無観客で行われてるのに、なんで五輪はOKなのか不公平感が出る」といったコメントを踏まえ「これは今年選挙があるからって理由だけだと思いますよ。公平感? ピアノの発表会なんてどうでもいいでしょ。オリンピックに比べれば」とバッサリ。
 続けて「なんだけど、それを一緒にするアホな国民感情に今年選挙があるから乗らざるを得ない。Jリーグやプロ野球だって入れてるんだから。ポリティカルな判断に尽きると思う。まあ、そのうち誰かが金メダル取ったら雰囲気変わると思いますよ」と分析した。

Yahoo!ニュース・東スポ「夏野剛氏 子供の行事と五輪の比較論をバッサリ『ピアノの発表会なんてどうでもいいでしょ』」より引用

 夏野氏は五輪組織委の参与も務めておられるとのことです。

 こうした発言で、KADOKAWA(カドカワ)という会社の体質がよく分かりますし、企業のトップが自らの考えを積極的に情報発信するって大事なことだとあらためて思いました。

 NHK Eテレに関しては、「障害者いじめ」自慢を電波に乗せたのではなく、「障害者いじめ」自慢をしていた小山田氏を番組で起用したことに関して、定例会見で幹部が答えたようです。

 スポニチの記事「NHK放送総局長 『デザインあ』に小山田圭吾起用時も問い合わせあったこと明かす」から引用します改行と太字、蛍光マーカーは筆者。誤字は原文のまま)。

また「デザインあ」がスタートした2011年にも、小山田氏の起用について問い合わせがあったことを明かした。
担当社は「(小山田の)所属事務所から説明受け、本人が重々反省して後悔しているという話を聞いて、当時はその説明を受け入れた」と起用を継続した理由を説明。

Yahoo!ニュース・スポニチ「NHK放送総局長 『デザインあ』に小山田圭吾起用時も問い合わせあったこと明かす」より引用

 NHKについては、「障害者いじめ」自慢を知っていたけど今回の炎上が起こるまで起用し続けたという点で五輪組織委と違うところです。「高い倫理観」という言葉を使わなかっただけマシかもしれませんが。

 小山田氏が炎上した最初の頃にTwitterでたくさん引用されていた電八郎 (id:denpatiro)さん「孤立無援のブログ」が更新されていました。

 「孤立無援のブログ」によると、電八郎さんが「小山田圭吾における人間の研究」と題する記事をアップしたのは2006年11月15日「小山田圭吾のいじめを次世代に語り継ぐ」2012年8月12日です。

 3日前、2021年7月20日にアップされた記事「小山田圭吾が朝鮮人と黒人を差別する」から引用します(太字、蛍光マーカーは筆者)。

 15年前に私は「小山田圭吾における人間の研究」というブログを書き、小山田圭吾の悪行を告発した。
 私は石を投げた。
 しかし、マスコミ音楽業界ジャーナリストも、何もしなかった。
 小山田圭吾はあたりまえに音楽活動を続けて、NHK教育テレビの子供番組「デザインあ」の音楽を担当し、ユニクロのCMに出演し、「ロッキン・オン」主催の脱原発ロックフェスに参加し、坂本龍一高橋幸宏細野晴臣や、多くの著名アーチストと共演した。海外ツアーを行い、グラミー賞の候補になった。
 そのたびに、私は石を投げた。
 しかし、彼らは何もしなかった。
 私が石を投げるのを、罵倒し、嘲笑し、妨害さえした。
「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この者に石を投げなさい」と。
 それでも私は、石を投げ続けるだろう。

孤立無援のブログ「小山田圭吾が朝鮮人と黒人を差別する」から引用

 15年前に小山田氏を告発し、その後も地道に語り継いでこられた電八郎さんの活動は評価されるべきだと思います。

  電八郎さんの活動を「罵倒」「嘲笑」「妨害」していたくせに、今回の大炎上で手のひらを返した「マスコミ」「音楽業界」「ジャーナリスト」の皆さまはぜひ、今回の件を総括された上で何らかの情報発信をすべきでしょう。

 高くはなかろうとも、 「倫理観」をお持ちなのであれば。

 小山田圭吾氏の名を冠したぼくのブログ記事はとりあえず、これで一区切りとします。

 障害児の父親としても、いろいろと「学び」が多い炎上騒ぎでした。

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