ちょっとした工夫で学校での問題行動を大きく減らす効果が得られました〜シールを4枚以上集めると素敵な特典があります
子どもたちからすれば「あっという間」なのでしょうけれど、保護者にとっては結構長くて慌ただしい冬休みが終わり、ようやく3学期が始まります。ホッと一息、といったところです。
息子はいま小学校の特別支援学級の2年生ですので、これまで小学校に1年9カ月も通ったことになります。この間、学校に通うのを嫌がったことは1度もなく、親としてはそれが一番うれしくもありがたいことでした。
振り返ってみるに、成長に伴う変化はいろいろありました。
2年生になってからの息子は、学校生活に慣れてきた上に、担任の先生がベテランの男性から優しい女性に代わったためもあってか、学校で「ふざける」ことが増えてきました。
ABA(応用行動分析)の用語を使えば「コンプライアンスがきちんと築かれていない」、分かりやすさを優先して表現すれば「相手をナメていて言うことを聞かない」ということです。
これは現在の担任の先生の指導力に問題があるのでは決してなく、単に先生が「優しい年上の女性」だという理由で確信犯的に甘えているのです。
本人からの供述はありませんが、これまでの長い付き合いから動機は容易に想像できます。どうせそんなところでしょう。
一般的には、自閉症(しかも重度)ゆえ、相手の様子をみて態度を変えるのは苦手なはずだと思うんです。
でも、息子のこれまでの行動パターンを分析するに、こういう「甘えても許してもらえる相手かどうかを見極める能力」には長けているようです。本当に困ったものです。
そういえば、息子は同級生を始めとする子どもに対しては基本的に無関心で、顔色を読もうとしません。子どもは自分が甘えられる相手にはなり得ないだろうからスルー、ってことなのかもしれません。
障害ゆえできないことが圧倒的に多いのですから、せめて「一生懸命さ」「ひたむきさ」を強調して周囲の方々から同情を誘えばいいのにとも思うのですが、当然ながら、彼にそういう発想は全くないようです。
余談ですが、こういう息子の「ふざける」「すぐに調子に乗る」性質に触れるたび、自分自身をみているようで、なんとも複雑な心持ちになります。
この子は重度自閉症はあるけれど、紛れもなくぼくの子だな、と。似なくていいところが似てしまうんですね。
とはいえ、まじめに一生懸命指導をしてくださる担任の先生を、障害とは直接関係がない生まれつきの性質ゆえに煩わせてしまうのは、保護者として心苦しいものです。
それで、妻は2学期から、先生のご協力も得て、ABA(応用行動分析)の考え方を使った対処法を導入しました。
①授業中の「約束事」をあらかじめ決め、息子と担任の先生に伝える
②専用のノートを先生にお渡ししておく (*1)
③授業時間中に約束事を守ったら、ノートにシールを貼ってもらう
④シールを4枚以上もらえた日は、放課後に強化子(ごほうび)を与える
「約束事」には、「急に大声を出す」「教室のホワイトボードを勝手に消そうとする」「先生の机を勝手にあけようとする」「もらったプリントを舐めようとする」などなど、先生から事前に聞いていた授業中の問題行動をリストアップしました。
その上で、リストアップした問題行動を息子に示し、「やってはいけません」と伝えました。
「ごほうび」は、「近所の公園で一緒に遊ぶこと」です。現在の息子が一番喜ぶことをセレクトしました。体力と根気はいりますが、なんとも安上がりです。
授業が5限まである日なら、全ての授業時間で約束を守ることができればシール5枚、うち1限で問題行動があればシールは4枚になりますが、「まあまあ頑張った」ということでOK、ということにしました。
効果は絶大でした。学校に迎えに行くと、シールを4枚以上もらった日は、「シール4枚!公園に行く!」と誇らしげにアピールしてきます。
シールをもらうためには、約束事を守る=先生の言うことを聞くーというルールが定着して、問題行動が大きく減りました。
でも、問題行動がゼロにはなりませんでした。
ルールを理解しているけれど、やむにやまれず、あるいは衝動的に「ふざけて」しまいたい気持ちになる時があるのでしょう。
そんな気持ちは理解できなくもないのですが、シールが3枚以下でも、息子は「公園に行く!」と主張してきます。「ダメ元だけど、とりあえず言ってみよう」という感じで。
妻によると、最初の頃は頑として公園に連れて行かなかったのですが、あまりに激しく嘆き悲しむため、3枚以下の日は家での療育の時間を普段より長く設定し、ちゃんと療育をこなしたら公園に連れて行くーというルールに微調整したそうです。
シール3枚以下の日は、公園に遊びに行く時間が普段より遅くなるというのが小さなペナルティーになりますし、ママとの家でのお勉強(家庭療育)をしっかりやれば公園に行けることが分かっているため、いつもより真剣に取り組んでくれるとのことでした。
息子の側からみれば、学校でついついふざけてしまってシールが少なくても、「敗者復活戦」として、家で真面目に頑張ればリカバーできるわけです。
この手法はいろいろと応用がききそうです。
お子さんが特別支援学級に通っている場合、指導の専門性が高い(と思われる)特別支援学校とはまた違う意味で、教職員の先生方とのコミュニケーションが重要になってきます。
学校の先生と保護者、両者が協力しあいながら「その子に合ったラクで効果的な指導法」を模索していくというのはすごく大事なことでしょうし、先生と保護者に「心の余裕」が生まれることは、障害当事者である子どもにとってもプラスに働くとも思うのです。
息子が家で「ふざける」「調子に乗る」のは1年生の頃から変わっていないのですが、1年生の時は「学校で頑張ってルールを守っているのだから、家では少し気を抜く時間があってもいいよね」ってことで温かい目で見ていました。しかし、2年生の1学期は、学校でも同じようにふざけてしまうようになったため、かなり悩んだ末に妻がこの対処法を考案しました。「ずっと厳しい」「ずっと甘い」では教育効果は低くなるでしょうし、やはりメリハリが大事なのだと思います。
文中で「強化子」というABA用語を使いましたが、分かりやすさを優先して「ごほうび」という大ざっぱな説明にとどめました。ABAについてご興味がある方はこちらのサイトをご参照ください。小学館が運営する「HugKum(はぐくむ)」というサイトが「NPO法人つみきの会」の藤坂龍司代表にインタビューした記事が掲載されております。
(*1)初稿では「専用のノートとシールを…」としていたのですが、妻によると、シールは担任の先生が用意してくださっているとのことでしたので、表記を直しました。先生、いつもありがとうございます(2020.01.14修正)。
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