ZOOMは療育の役に立つかもしれない
息子は最近、ぼくのスマホを奪っては自分が写っている動画を繰り返し観るのがマイブームです。
動画のコンテンツとしては、「電車のボックス席に座り、車窓の外を眺める自分」「駅のホームにある待合室のドアを開閉する自分」が二大お気に入りのようです。
スマホを耳に当てて「ガタンゴトン」という走行音を聴いたり、「ママとトトと でんしゃにのっている!」と言いながらうれしそうに画面を見せてきたりと、ここまではいいのですが、ドアが開閉する様子をみて歓声を上げる心境はよく分かりませんでした。
駅のホームの待合室は最近、新型コロナウイルスの感染防止対策のため、自動ドアのスイッチが切られていたり、常に開きっぱなしで閉まらないようになっていたりするため、思うように遊べず、彼はご不満なようです。
それゆえ、対策が講じられる以前の「古き良き」待合室のドアを動画で眺めてばかりいるのかもしれません。
われわれ夫婦としては、今の状態が続く方がラクでいいです。彼にも「新しい生活様式」に慣れてもらいましょう。
テレビをほとんど観ない息子が、自分自身や家族が写っている動画をどういうものと認識しているかは分かりませんが、「そういうもの」として受け入れ、楽しんでいるようです。
先日、夜勤明けの午前中に目が覚めてキッチンに入ろうとしたら、ママが息子を抱き抱えながらノートパソコンの画面に話し掛けていました。
ああそうだった、忘れてた。今日は療育仲間とZOOMで交流会をすると言っていたっけ。
覚えていたら、トランクス1枚で寝室から出なかったのに。
新型コロナウイルスの感染拡大により、息子の療育&教育関係の催しがことごとく中止になっています。
3月1日に新潟市中央区で開催された「つみきの会新潟支部定例会」を最後に、われわれ家族が参加できる療育関係の集まりはゼロになってしまいました。
新潟支部有志による手作りSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)の集まりも、地元NPO法人が毎年やっている障害児向け水泳教室も本年度(ことし4月以降)は開かれておりません。
「リモートワーク」「オンライン飲み会」といったものが登場していますが、もともと対面でのコミュニケーションですら難がある発達障害児に、いきなり「スマホやパソコンの画面越しに会話してごらん」と急に言ったところで、ねえ。そりゃあ難しいですわ。
さらに知的障害も併せ持つわが息子に「新しい生活様式だから」と言ったところでねぇ、ほぼほぼ不可能な感じもします。
とはいえ、これからは「withコロナ」時代に対応した新たな療育のスキルが必要となってくるのかもしれません。
先日のZOOM交流会は、手作りSSTの参加メンバーのお父さまが段取りをしてくださったそうです。ありがとうございました。
妻によると、息子はいちおう交流会が終わるまでノートパソコンの前に居ることができたそうです。
といっても、写真の通りでママが息子を抱き抱えながらですし、恐らく「楽しい」とは感じなかったでしょう。
ママに「最後まで頑張ったらパンを食べていい」とか言われて、退屈さを我慢していたのでしょう。
それでも、本人も初めてのことでワケがわからなかったでしょうし、最後まで参加できただけで100点満点です。
今後のステップとしては、「やっていることの意味が分かって、自発的に参加するようになる」ことです。
「やっていることの意味が分かる」というのは、「画面越しにリアルタイムで相手とつながっていて、話し掛けられたり話し掛けたりできる」という仕組みを理解することであり、「自発的に参加」というのは、そういう仕組みが理解できた上で「楽しいからやってみたい」と思ってもらうことです。
健常児であれば、特に説明しなくても仕組みも楽しさも理解できるでしょうが、重度自閉症児であるわが息子には、ABA(応用行動分析)的な「小さなことの積み重ね」が必要となります。
「3ステップ」で考えてみました。
・あらかじめ撮影したママの動画を観せて、ママが動画内で指示したことができるようにする
↓
・あらかじめ撮影したママ以外の人の動画を観せて、その人が指示したことができるようにする
第1ステップとしては、あらかじめ撮影しておいた動画を観せて、動画内の人の指示に従うーというものです。
家族でお出掛けした時の動画などを好んで観てはいますが、「動画に出てくる人の話を聞く」というのは初の経験ですので、まずは慣れてもらう必要があります。
・スマホを持ったママと、ノートパソコンの前にいる息子をZOOMでつなぎ、リアルタイムで意思疎通ができるようにする
↓
・スマホを持ったママ以外の人と、ノートパソコンの前にいる息子をZOOMでつなぎ、リアルタイムで意思疎通ができるようにする
これが第2ステップです。リアルタイムでつながると、息子がちゃんと指示に従わないと、画面内の人が「ちゃんとやりなさい」と注意され、うまくできれば、画面内の人がほめてくれます。
先ほどのものと異なり、「画面越しにいる人に話し掛ける」ことができ、自分の対応次第で「画面越しにいる人の反応が変わる」わけで、それが理解できるようになることが目標です。
・ノートパソコンの前にいるママと、スマホを持った息子をZOOMでつなぎ、リアルタイムで意思疎通ができるようにする
↓
・ノートパソコンの前にいるママ以外の人と、スマホを持った息子をZOOMでつなぎ、リアルタイムで意思疎通ができるようにする
この第3ステップは「おまけ」みたいなもので、デバイスが変わっても同じように対応できるかどうか、という練習です。
ここまでクリアできれば、ZOOMの交流会が「楽しい」と思えるようになるはずです。道のりは長そうですが、やってみようと思います。
しかしまあ、コロナの感染拡大がなければ、こんなことを考えることもなかったと思いますが、できるに越したことがないスキルともいえます。
将来的に、福祉作業所の仕事がリモートでやれる時代になるかもしれませんし。
上に挙げた3ステップの中で、「ママ→ママ以外」「ノートパソコン→ノートパソコン以外」のように応用範囲を広げることを、ABAの用語で般化(はんか)と言うようです。音だけ聞くと何だか想像がつきませんが、漢字をみると「一般化」「汎用化」みたいな意味かなぁと類推はできます。
本当にどうでもいいことですが、ぼくはABAをちゃんと学んでいないため、妻や「つみきの会」関係者が「はんか」という言葉を使っているのを聞くと、仏像の「半跏(はんか)像」がいつも頭に浮かんでいました。「何なの?アルカイックスマイルでポーズを取るの?」ってなもので。
にほんブログ村
自閉症児育児ランキング