一部の「撮り鉄」の方が攻撃的でキレる理由はなんとなく理解できたし、アンガーマネジメントにはたぶん自閉症児(者)への療育の手法が効果的ではないかと思う
前回取り上げた「江ノ電撮り鉄トラブル」の現場写真について、ネット上で論じられていました。
「原田浩司/Koji Harada」(@KOJIHARADA)さんのツイートを引用します。
いやホントにおっしゃる通り。
プロの写真家である原田さんの評価と解説は、素人のぼくにも合点のいくものでした。
そして、現場で撮影していた撮り鉄の中には、写真に男性が映り込むというハプニングを好意的なものとして捉えている方もおられたようです。
しかし、現場にいた一部の撮り鉄はなぜ、あんなにキレて怒りをあらわにしたのか。
ご自身も鉄道ファンだという岩井 將悟(ひわいさん)さんが「色々なジャンルのオタクのうち、なぜ #撮り鉄 はとくにトラブルを起こしがちなのか」というタイトルのnoteを書かれています。
冒頭の一部を引用します(蛍光マーカーは筆者)。
同じような形の車体が何個も連結し、規則正しい時刻で運行され、決まった路線の上を移動する鉄道という乗り物が、発達障害を持っている人に好まれるという説は耳にしたことがある人も多いでしょう。
岩井 將悟(ひわいさん)さんのnote「色々なジャンルのオタクのうち、なぜ #撮り鉄 はとくにトラブルを起こしがちなのか」より引用
また、規則性を崩されると急に攻撃的になる、社会ルールよりも規則性の維持を優先する、なども発達障害の特徴といえるかもしれません。
…自分の知人や友人にもその障害を持つ人がいますが、当然のことながら、彼らが全員害悪撮り鉄になるわけではありません。他にもいくつかの原因が考えられるはずです。
このように断られた上で、「いろんな鉄道マニアのジャンルがある中で、なぜ撮り鉄に多いのか」という点について、論考を試みています。
鉄道そのものを個人で所有することはほぼ不可能だが、カメラという、ある種の人にとっては「依存性の強い麻薬」を使って自分が望む形の写真が撮影することで、「手に入らないものを追いかける呪い」が満たされることになる。
こうした感情は、コスプレする女性を撮影する「カメコ(=カメラ小僧)」に通じるものがあるけれど、コスプレイヤーに群がるカメコは限定された場でのことで一般の人々の目に触れる機会がないが、鉄道は公共的な存在なので、問題行動があった場合に多くの人々から可視化されやすいー。
岩井さんの論考をぼくなりにまとめると、こんな感じになります。
カメラ小僧を「カメコ」と呼ぶことも今回初めて知りましたし、「手に入らない存在(鉄道や女性)を写真として手に入れる」「カメラ自体にも麻薬性がある」というのは、ぼくが一人で考え続けていても絶対に出てこない視点でした。
非常に勉強になりました。
ただ、これだけでは、「江ノ電撮り鉄トラブル」で一部の人々がなぜあれほど余裕なくキレたのかという部分がピンと来ませんでした。
他にも調べてみて、分かりました。
キーワードは「編成写真」です。
「5ちゃんねる」で炎上していた際にスレッドにも転載されていた尺貨マン(@Shakkaman_557E)さんのツイートを引用します。
一枚の画像にこれだけの情報量を詰め込んでも見やすいというのは驚異的です。中央省庁の審議会の出来のいい添付資料のようです。
ただ、こういう感じの鉄道写真は結構目にしますが、何がいいのか分かりませんでした。
予備知識がないと、単なる無機質で個性に欠ける写真にしか見えません。
こんなにたくさん「チェックポイント」があるとは…。なんとストイックな世界。
満点を取るのは至難の技でしょう。フィギュアスケートみたいです。
そして、このルールの中で完璧な編成写真を撮るのには、自閉症/発達障害の特性がある方が持つ「こだわり」がプラスに働くであろうことも、容易に想像できます。
この基準からいくと、先の江ノ電写真のように人物が映り込むと、大きく減点されることになるのでしょう。
編成写真の撮り方については、京急電鉄のサイト内にある「鉄道写真家中井精也の楽しい!鉄道写真入門」というコーナーの「第2回 編成写真の撮り方」が分かりやすいです。
編成写真を思い通りに撮るのに、事前の準備や手間が膨大にかかることは容易に想像できます。
そして、何らかのハプニングが起きて思い描いた絵柄にならないとキレる人が出てくるのも、なんとなく理解できました。
撮り鉄の方々は、思い描いた「完璧」を手に入れるために、膨大な準備作業を重ねて、「本番」に臨んでいるはずです。
なのに、それを手に入れる直前で誰かに壊されて、汚されてしまった。湧き上がってくる絶望感や怒りの感情をどう処理すればいいのか分からないー。そんな思いなのではないでしょうか。
ただ、世の中、外的要因によって自分の思い描いた通りに物事が進まないことは多々あるわけです。
思い通りにならないたびにパニックやかんしゃくを起こしていると、周囲の方々に心身の負担をかけることになりますし、そんなことを繰り返していれば、ご自身も疲れ果ててしまうでしょう。
「パターン通りにいかなくてもパニックを起こさず、過度にガッカリせず、順応できるテクニック」を身につけることは、ご自身が穏やかに楽しく生きていく上でも、必ずやプラスになるはずです。
それには、「少しずつ『こだわり』を柔らかくしていく」ことで、突然の状況変化があってもパニックを起こしたり他害したりしなくなるようにセラピストが導いていくことが効果的ではないでしょうか。
このブログを読んでくださる方は自閉症/発達障害があるお子さんを育てている保護者や福祉関係の方が中心だと思われますので、もうピンと来たと思います。
そうなんです。一部撮り鉄の問題行動を減らしていくには、ABA(応用行動分析)に基づく療育的なアプローチが役に立つのかもしれないんです。
非常識な少数の撮り鉄が目立つから叩かれるだけで、大多数の撮り鉄の方は、社会と折り合いをつけて趣味としてたしなんでいる人格円満な方なのではないでしょうか。
こんなツイートを見つけました。
すごく素敵です。
直接被害を受けたり不快な思いをされた方々が「許せない!」って感情を抱くのは理解できるのですが、ネット上での「撮り鉄叩き」は見ていて気持ちの良いものではありません。
撮り鉄間の「共助」により一部の人々の問題行動が減り、社会とのトラブルを起こさず趣味の撮影に没頭してできる環境ができることを願ってやみません。
今はエレベーターとドアへの興味にとどまっている息子が、いずれ「撮り鉄」の分野に進出する可能性もゼロではないでしょうから、とても他人事とは思えないのです。
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