「どうやって習得していったのか」シリーズ〜①ターザンロープ

はじめに

 「這(は)えば立て 立てば歩めの親心」なんて言葉が昔からありますが、子どもの成長を見るのはうれしいものです。発達障害がある子どもの場合、成長のスピードが健常児と比べてほんの少し遅かったり、けっこう遅かったり、ものすご〜く遅かったりと、バラエティーに富んでいます。それゆえ、できることが一つ増えた時の喜びは格別です。

 わが家では、「つみきの会」のテキストや定例会で学んだABA(応用行動分析)の手法をベースに、妻がいろいろなことを教えています。教え方は、必ずしもテキスト通りに進めているわけではなく、必要に迫られたものを先にやったり、アレンジを加えたりしているようです。
 「必要に迫られたもの」とは例えば、学校の歯科健診が近くなってきたので口を開け続ける練習をするーなどです。

 集中的に時間をかけて教えてもほとんど成長がみられなかったり、特に教えていないのに自然とできるようになっていたりと(こちらは非常に少ないですが)、いろいろです。

定型発達(ていけいはったつ、: typical development, TD)とは発達障害でない人々(あるいはそのような状態)を意味する用語である。…自閉症発達性協調運動障害注意欠陥・多動性障害といった発達障害でない人々を指す。

wikipedia「定型発達」より

 この用語は、息子が自閉症と診断されてから知りました。発達障害の人たちは「非定型発達」というわけです。
 これは本当に「うまい」表現でありまして、息子と暮らしていても、発達障害があるお子さんを育てている保護者の方の話を聞いても、「型通りではないよなぁ」としみじみ感じます。

 「障害は個性」という表現はあまり好きではないのですが、発達障害児は「定まったカタチ」でないゆえに、その保護者は「定まったカタチ」でない対応が迫られるのです。

 ここでは、息子がこれまでに「どうやって習得していったか」を分野別にまとめてみます。成長がとても遅いのですが、できることは少しずつ増えてきています。

 障害の有無に関わらず、子育てをしていると、「他の子はできるのに、なんでうちの子だけできないの」と悩むことがあると思います。
 その分野だけ少し成長がゆっくりなだけかもしれませんし、教え方のコツがあったり専門家の助力を求めた方が良かったりする場合もあるかもしれません。何にせよ、お子さんを責めないでいただきたいです。

 では、本題に入ります。

①ターザンロープ(習得:7歳6カ月)

公園のターザンロープで遊ぶ男の子
写真=ターザンロープを「正しく」使えるようになった直後の息子=2019年6月、新潟県新発田市

 「どうやって習得していったのか」と銘打ったシリーズの1回目が、日常生活に特に役に立たない「ターザンロープ」なのはご愛嬌ということで。「トイレトレーニング」「偏食をなくす」など重要なテーマについては、いずれ妻が書くはずです。
 このターザンロープ、公園で見ていると、 2〜3歳ぐらいに見える小さなお子さんも上手に遊んでいます。

  わが息子がこれをちゃんと使えるようになったのは、7歳6カ月の時です。「ちゃんと」というのは、ロープにつかまって足を地面から離し、前に進むことを指します。この遊具です(写真参照)。公園で見かけたことがある方も多いと思います。

  息子は公園に行き始めた2〜3歳の頃からターザンロープ自体には興味があって、遊んでいるお友達がいないと、ロープを引っ張って走ったり、ロープの端をつかんで投げて滑車の音やロープの軌跡をじっと見つめたりしていました。
 で、他の子が息子から「使ってないんだったら貸してよ」って感じでロープを取り上げられ、他の子どもたちがいなくなるまでじっと待ち続けるーというやり取りを繰り返してきました。

 他の子にロープを取り上げられた時は、一般的な遊び方を教えるチャンスでもあり、「お友達が上手にロープにつかまってるねぇ。ああやって遊ぶんだよ」と声を掛けながら眺めるように促すのですが、なかなか見てくれません。

 定型発達の多くのお子さんたちは、大人に使い方を教わるか、他の子が遊んでいるのを見て、自然に使い方を覚えるのでしょうが、息子は一向にできるようになりません。
 「できなければ日常生活に支障をきたす」ようなことであれば、妻がABAを使って段階的に教えていくのですが、ターザンロープができなくても困らないだろうと思って、気にもしていませんでした。

 そんな中、7歳6カ月のある日、息子が突然できるようになっていました。感動して写メを撮りまくり、上記の写真はその一枚です。

 他の多くの子に遅れること5年余り。何十回何百回と教えたり見せたりしても変化や上達は全くみられませんでしたが、実は過去のそうした繰り返しで1滴ずつコップに水が溜まっていき、5年以上かかってコップがいっぱいになって溢れ出たのかもしれません。本当のことは分かりませんが。

 このシリーズは、発達障害があるお子さんを育てていく上で「こういうアプローチが有効かもしれませんよ」といった具体例を挙げて解説するのも狙いではあるのですが、今回のターザンロープに関しては何もありません。
 「何が決定的だったのかよく分からないけれど、突然できるようになることもある」という一例です。

 彼にとってターザンロープは長らく、歩けるようになってから現在に至るまで一貫して偏愛する「自動ドア」と同じで、規則的な動きを「眺めて楽しむ」ものだったのでしょう。

 そういえば、ブランコで遊ぶ際も、小さな頃は座らないでひたすら揺らして軌跡を観察していました。何かの拍子に「ロープをつかんでぶら下がった方が楽しいんじゃね?」と思い立ち、やってみたらできたということかもしれません、定型発達の子どもたちより5年以上遅れる形で。
 彼の心中にどのような変化があったのか、会話ができるようになったら聞いてみようと思います。

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