ハンガーを管理することこそオレの使命
息子とは8年半も一緒に暮らしていますので、彼の行動パターンはほぼすべて把握しています。
「自閉症児の親あるある」かもしれませんが、自分の気に入った行動パターンを見つけると、それを毎日のように繰り返します。
そして半年ぐらいでマイブームが去り、別の行動パターンを取るようになります。その繰り返しです。
行動パターンへの「こだわり」を壊し、減らしていくことは、自閉症児の療育には重要です。
人生いつでもどこでも自分の思ったように行動できるわけはありませんし、思い通りにならなくてかんしゃくを繰り返してばかりでは、本人も保護者も疲れ果てます。
日常生活のパターンから外れたものに関心を抱くことは、人間としての幅を広げていくの大切なことだと思います。
ただ、保護者としては、例外的に自閉症児のこういう性質がありがたく思える時もあります。
一例を挙げますと、息子と2人でショッピングモールに買い物に行くと、姿を見失ってしまうことが結構あります。
過去に一度だけ、不覚にも店員さんにご協力いただいて探してもらったことがありますが、基本的に息子を見失っても焦りません。
行動パターンを把握しているからです。
ぼくの目を盗んでドアの開閉をして遊んでいるはずですので、その施設のドアを一つ一つ確認していけば必ず息子を見つけることができます。
今回は、最近のそんなマイブームについて。
彼はここ数カ月ほど、「ハンガーに服をかける」という作業を偏愛しています。
洗濯物を干す手伝いは2年ぐらい前からさせていて、楽しそうにやってくれるのですが、ここ最近は洗濯物干しから離れて、ハンガーの管理が目的化しているようにみえます。
何でもハンガーに掛けたがります。ただ、自分の服ではなく、たいていはぼくのワイシャツやTシャツで、たまに妻のブラウスにも手を伸ばします。
家族の中ではぼくの服がサイズが一番大きいので、掛けやすいのでしょう。
ただ、洗濯が終わった服を干すのであれば問題ないのですが、彼は洗濯したばかりの湿った服をハンガーに掛けてクローゼットに入れたり、脱いで洗濯カゴに入れた服を出してきて掛けたりしてきます。
そうすると、「生乾きの服」と「洗っていない服」がクローゼットの中に混在するわけです。
気づかずに放置していると、とても恐ろしいことになります。
「これは昨日洗った」「あれはさっき脱いだばかり」と服を正確に覚えていれば問題ないのでしょうが、記憶に自信がなくなって疑心暗鬼になると、クローゼットの服を毎日すべて触り、においをかいで確認するハメになります。
さらに、彼は自分が使うハンガーを確保するため、クローゼットに保管している服をハンガーから外し、どこかに持って行きます。
隠し場所がよく分からないのですが、使っていないハンガーを何本か家のどこかにストックしているようなのです。君はカラスか!
マイブームが始まってからは、自分で服を掛けたハンガーを手にうれしそうに家の中を歩き回っています。
クローゼットに鴨居にコートフックにハンガーをぶら下げては眺め、気が向くとハンガーから外して試着もしています。
で、妻やぼくを呼んでは「写真を撮る!」と言ってスマホでの記念撮影を求めてきます。
これまで見てきた感じでは、息子はお絵描きや楽器の演奏など芸術系の素養はなさそうです。
でも、お風呂掃除や雑巾掛け、野菜の収穫など実用的なことは喜んでやってくれます。
将来的に身辺自立してどこかで仕事をする時に、こうしたスキルは役立つかもしれません。
そんなふうに考えると、ハンガーを持ってウロウロするのも「まあいいや」という気持ちになります。
よく分からないけど、楽しそうだからOK。
主夫の素質はありそうです。いずれ、親元を離れて心優しい女性と2人で暮らし、「家事は任せろ!」と胸を張ってほしいものです。
そんな将来像を思い描くに、脱いだばかりの服と洗った直後の服を一緒くたに扱うのには問題があります。
ハンガーに興味を持っている今こそ、質の高い家事ができるよう、ABA(応用行動分析)のアプローチで導いて行かなければなりません。
家庭的な男、いかがでしょうか?
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