「面識のない大人をどう呼ぶよう教えたらいいか問題」にどう対処したらいいか分からない
これ、地味ながら結構面倒なんです。
家族や親族は「とと・ママ」「ばば・じじ」などですし、同級生など面識ある人であれば名前か名字で呼べばいいわけです。
面識がなくても相手が子どもであれば、年上なら「お兄さん・お姉さん」、同じぐらいなら「お友達」、小さいなら「赤ちゃん」という呼称でなんとか乗り切れます。
では、「面識のない大人」をどう呼ぶよう教えればいいのか。
先日、妻が息子を連れて近所のドラッグストアに行った時、こんなことがあったそうです。
息子は店に入らないで出入り口の自動ドアをずっと眺めていて、急に大声を出しました。
おじいさん入った〜!
息子の目の前から入店した、60代と思われるマッチョなスキンヘッドの男性のことを言っているようです。
ぼくの父(息子にとっては「じじ」)がスキンヘッドなので、「スキンヘッド=おじいさん」というふうに覚えていたのでしょうか。
幸いに息子は発語があいまいですので、この男性に言っていることが伝わらなかったようですが、声がデカイのなんの。
あらかじめ対処法を決めてちゃんと教えていかないと、いずれ「やらかし」かねません。
この時、妻はこう言ってたしなめたそうです。
急に大声を出さないで。人に向けて指をさしちゃダメだよ
スキンヘッドの男性を「おじいさん」と呼んだことの是非については、ここでは触れなかったそうです。
「面識のない大人をどう呼んだらいいか」問題に対しては、妻は2年ぐらい前まで真剣に向き合っていました。
妻は、売れ残って8〜9割引になった雑誌を大型書店で大量に買ってきて、写真を切り取ってスクラップのようにして分類していました。
一般的な「おじいさん・おばあさん」を家庭療育で教える教材を作るためです。「おじさん」も教えていました。
「おばさん」については、そう呼ばれるのを不快に思う方がおられることもあってか、教えていなかったようです。
この家庭療育は、わが家では長らく中断したままになっています。
「おじいさん・おばあさん=ご高齢の方」をきっちり定義することが不可能だと分かったからです。
例えば、「髪の毛が白い」「顔にシワが多い」「腰が曲がっている」「動きがゆっくり」といった感じの男性を「おじいさん」、女性を「おばあさん」と呼ぶように教えるとします。
もうお気づきになった方も多いでしょうが、この程度の属性だけで「おじいさん」「おばあさん」と呼ぶかどうかを決めるのは危険なのです。
ご高齢の方にもいろんな方がおられるわけですし、ご高齢でなくてもこういった属性に当てはまる方もおられるわけですので。
突き詰めていくと、大人を「おじいさん・おばあさん」かどうかで線引きすることに意味があるのかーという問題にぶつかります。意味はあまりなさそうです。
なのですが、妻としては、「おじいさん・おばあさん=ご高齢の方」に対しては、他の大人に対するより優しく丁寧に接しなきゃいけませんよーってことを教えるつもりだったようです。
そういうことを教えることは、意味がある大事なことだと思うのですが、「おじいさん・おばあさん」の定義があいまいなまま教えると息子が混乱しかねないですし、トラブルに巻き込まれる可能性も考えられことから、ずっと放っておいたのです。
息子はプリングルスの筒を見ると「おじさんポテト」と言います。「おじいさん入った〜!」発言と同じで、療育で途中まで教えたことがまだ彼の記憶に残っていたのでしょう。
属性を教える難しさというと思い出すのが、妻が息子に性別を教え始めた頃のエピソードです。
この頃、息子は「ママ女!」「じじ男!」「●●先生男!」などと、教わったことを口に出してよく復習していました。
ここまではいいのですが、息子は同級生の名前を挙げて「☆☆さん女!」と言うようになったのです。
危険な空気を察知して、妻は急きょ、「女の子」「男の子」という属性も新たに教えることにしました。
「女!」で間違いではないのですが、学校で本人に面と向かって言ったら不快に思われる恐れがあります。
しかし、「おばさん」って言葉を教えていなくて本当に良かった。
「おばさん」って言葉を適切に使うのは障害がない大人でも非常に難しいですし、そもそもどういう場面で使うのが「適切」なのか分かりません。
場面によって言葉を使い分けるのが苦手な自閉症児のためにも、「おばさん」って言葉、もう使うのやめませんか?
大切な同級生を「女!」と呼ぶ以上に、大きくて修復が困難な「トラブルの種」をはらんでいるような気がしますので。
にほんブログ村
自閉症児育児ランキング