サイクリングという「遊び」「運動」を7カ月間続けて得られた療育的な「学び」
新潟県内は「山沿いで雪」という予報が出始めました。
先日はサイクリングロードを走っていて「あられ」の襲撃を受けました。この時は数分で降り止んですぐに消えたので続行できたのですが、サイクリングに代わる冬用「余暇スキル」を考える時期になってきました。
幸いというか成長のおかげなのでしょうが、風雨がものすごい日に「自転車に乗りたい!」と強硬に言うことはなくなりました。
こちらから「自転車に乗る?」と聞いても、「家でゆっくり過ごす!」と答えるようになりました。
5分と同じ場所に居られなくて、あてのないドライブを繰り返していた3〜4歳の頃、息子が「家でゆっくり過ごす」などと自分から言うことは想像もできませんでした。
そもそも、当時は発語するだけで精一杯で、まだしゃべれませんでした。
息子とぼくがサイクリングロードを走り始めたのは4月上旬からで、コロナで自宅療養していた3週間を除けば、平均するとほぼ週3回は走っています。
1往復で約15キロ、往復の所要時間がちょうど1時間半ですので、この7カ月間で約130時間を費やして約1300キロメートルを走ったことになります。
ネットによると、東京ー宮崎間、新潟ー熊本間(こちらは全くピンと来ません)ぐらいの距離だそうです。
いずれ息子が人生を振り返った時、2021年は「サイクリングの年」ということになるでしょう。
サイクリングという「遊び」「運動」を7カ月間続けて得られた療育的な「学び」にどんなものがあったか、挙げてみます。
①判断・運動能力、平衡感覚を鍛える
すっかり忘れていましたが、サイクリングを始めた4月の頃はブレーキ操作が上手にできず、足を地面につけて自転車を止めていました。
止まることに不安があったからか、それほどスピードを出していませんでした。
ブレーキ操作に自信がついて、立ちこぎをするようになってからはスピードが出るようになり、変速機のついたママチャリでも息子に付いていくのがしんどくなってきました。
ただ、一緒に走っている中で、「ここではそんなにスピードを出さない!」「前を見て走る!」と毎回言い続けているうちに、前に人がいたり道があまり広くない場所だったりする場合に無茶なスピードを出さず、加減速にもメリハリを付けられるようになってきました。
これはものすごく大きなことです。
写真のジグザグ道も、最初は降りたり足をついたりしていましたが、夏が終わる頃には、こいで通過できるようになっていました。
②あいさつ、公的な場所でのマナー
横断歩道の前で一時停止してくれた車に「ありがとうございます」と言いながら頭を下げるという動作は、ぼくが促さなくても自発的にするようになりました。
ただ、彼は「ありがとうございます」を必ず3回言います。3回でワンセットなのです。
(横断歩道を渡りながら)ありがとうございま〜す
ありがとうございま〜す
もう少し大きい声で言う!
(少し大きい声で)ありがとうございま〜す!
車に乗っている人の方を見て、おじぎして言う!
(ドライバーの方を向いて頭を下げながら)ありがとうございま〜す!!
最初の頃に、横断歩道を渡るたびにこんなやり取りを何十回と繰り返していたため、「3回言うのがルール」というふうに覚えてしまったのだと思われます。まあいいや。
駅の地下通路のエレベーターに乗る際、「人が降りてから乗り込む」というルールは、何度も繰り返し言い聞かせることで覚えました。
「点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック)に自転車を置かない/なるべく立ち止まらない」というのは、一回言っただけで覚えました。こちらの方が、理解しやすいルールだったのでしょう。
写真は、地下通路のエレベーター前で、自転車の前輪を高く持ち上げて地面に叩きつける瞬間のものです。
最初は「何が楽しくてやっているだろう」と思って眺めていたのですが、そういえばこの動作、われわれ家族が暮らす新潟県新発田市の「新発田まつり」に登場する「しばた台輪」の「あおり」(前輪を持ち上げて下ろす動作を繰り返して台輪を前後に揺り動かすこと)にそっくりなんです。
まつりを見た記憶から真似しているとは考えにくいので、新発田人の魂がそうさせているのか、この動き自体が「血の気の多い男の子」全般が好む示威行為のパターンの一つなのか、いずれかなのでしょう。
③文字を読む
夏前ぐらいからでしょうか、サイクリングロードに並行して設置されている水道管に腰かけ、プレートの文字を読むようになりました。
読むのは往路の時だけ、薄暗い夕方や大雨の時は自転車を停めないでスルーします。
「水道管 注意 新発田市水道局 MEIWA」という文字を指差ししながら、これまた必ず3回読み上げます。「MEIWA」というのは、この水道管を作ったメーカー名のようです。
そして、周囲に人がいる時には、いつもより大きな声で読み上げます。聞いてほしいのでしょう。
④季節の移り変わりを体感する
これは夏場になってからですが、サイクリングロード沿いにある田んぼに水を引いている農業用水が気になるようになりました。
1回のサイクリングで5、6回は自転車を停め、水の流れをじっと眺め、水に手を突っ込んで「つめたーい!」「気持ちいいー!」と言うのがルーティーンになっていました。
サイクリングをしながら田んぼの稲が少しずつ成長するのを眺め、季節の移り変わりを体感できたのは、息子の情操教育上も良かったです。
最近は、田んぼで落穂をついばむ白鳥の姿をよく見掛けます。
⑤置かれた条件下で「選ぶ」練習
雨が降っている時のサイクリングでは原則、ぼくは雨具のフードを使い、息子はレインハットをかぶります。
雨具に付いているフードは手軽でいいのですが、自転車に乗りながら後ろを振り向いたりすると視界がさえぎられることがあり、慣れないと危険です。
梅雨時や夏場は雨に濡れてもそれほど寒くないので、息子もぼくもフードとハットをかぶらずに走りました。
他のサイクリングロード利用者の方々に「変わり者の親子」だと思われていたでしょうが、これがまた気持ちいいんです。
9月中旬以降はかぶるようにしましたが、息子はあんまりハットをかぶるのが好きではありません。
雨脚が少しでも弱まると、「帽子脱ぐー!」と言って取ろうとします。
雨が強く降っている時、家にいて息子がぼくに「自転車に乗りたい!」と言ってきた時には、こういうやり取りをします。
雨が降っているよー
雨が降っていても自転車に乗りたい!
帽子かぶらなきゃ自転車に乗れないよ
…。帽子かぶるー!
「ハットをかぶるぐらいな自転車に乗らない」「ハットはあまり好きじゃないけど自転車に乗りたい」のどちらかを息子が選ばせるつもりで聞いているのですが、ほぼ100%、ハットをかぶる方を選びました。
⑥世の中が必ずしもルール通りに進んでいないことを知る
サイクリングロードと一般道が交差する横断歩道ではしばしば、パトカーが一時不停止の取締りをしています。
そして、息子とぼくは、一時停止違反の車がパトカーに止められる現場を何度も見てきました。
回転灯のスイッチが突然入ってサイレンが鳴り響き、「そこの車、止まってください」と警察官がマイクでアナウンスすると、息子は自転車から降り、うれしそうに様子を眺めます。
息子には「横断歩道で待っていれば車は止まる」という交通ルールは教えていません。
残念ながら、守られていないことが多いからです。
息子はたぶん、「横断歩道で待っていて、止まってくれる優しい車があったら、お礼を言いながら渡るものだ」という理解をしていると思います。
ルールの原則を教えるより、状況を見て行動できるようになることの方が、はるかに重要です。
発達障害児(者)には理解が難しいところでしょうが、世の中は必ずしもルール通りに進んでいないことも多いので。
サイクリングを始めた効果から、ぼくは車を運転する際、歩行者信号がない横断歩道での一時停止について、これまで以上に意識するようになりました。
ぼくもかつて支払ったことがありますが、一時停止違反の罰金は7000円(大型車は9000円)です。
息子とぼくはこの7カ月で、計数万円の罰金が発生する現場を見てきたことになります。
7000円あれば、親子3人が焼き鳥店で十分な飲食をすることができます。
生ビール3杯×2人分に加え、「串の盛り合わせ」「半身揚げ」「手作りシューマイ」などをお腹いっぱい食べることができます。
ドライバーの皆さま、お金は楽しいことに使った方がいいに決まっています。
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