「感動と勇気を届けたい」というオリンピック選手の発言が炎上しているけれど、現役アスリートにそれほど高いコメント力って、いる?〜当事者家族が思う「感動ポルノ」⑤

「感動ポルノ」というパワーワードから連想することをこれまで4回書いてきました。

 「24時間テレビのことも触れたし、次はパラリンピックについて書いて終わりにしようか」と思っていたのですが、「本体」のオリンピックが燃えまくっていますので、そちらから。

 Yahoo!ニュースに「東京五輪結団式『感動届けたい』『最高のパフォーマンスで恩返し』」と題する毎日新聞の記事が載っていて、Twitterや「5ちゃんねる」で話題になっていました。

 記事に載っている五輪アスリートのコメントを抜粋します。

「日本中に明るいニュースが届けられるんじゃないか」
「勇気や元気を伝えていけるような試技をしたい」
「皆さんに感動を届けられるように頑張りたい」
「勇気や感動を届けられたら」

Yahoo!ニュース・毎日新聞「東京五輪結団式『感動届けたい』『最高のパフォーマンスで恩返し』」より

 どなたが発言しているのかご興味のある方は元記事で確認していただければと思いますが、なんか同じようなワードばかり並んでいます。

 オリンピック日本代表のアスリートって、「愛と勇気だけが友達」であることを自認するアンパンマンの仲間なのかもしれません。

 新型コロナウイルス感染拡大の第5波の到来が恐れられている中での五輪強行に異論が出まくっている中でもあり、こうした無邪気な「アンパンマンの仲間たち」のコメントに批判が集中しました。

特定商取引法改正を知らせる消費者庁のチラシのイラスト(消費者庁サイト「令和3年特定商取引法・預託法の改正について」より引用)


 消費者庁のこのチラシとともに「感動の送りつけ商法だ」と揶揄するツイートも多くみられ、「感動ポルノかよ」という書き込みもありました。

 ちょうどこのタイミングで改正された特定商取引法に絡めたのはウイットがあって「センスいいなぁ」と思いましたし、言うまでもなく、緊急事態宣言を再発令して市民のいろんなものを制限して民間の商取引を規制強化するって時に「オリンピックは特別」って政府やIOCの姿勢に批判や怒りが集まるのは当然です。

 明らかにおかしなことです。

 ただ、これらのアスリートたちのコメントにはぼくも脱力しましたが、アスリートたちを責める気持ちにはなりませんでした。

 これまでの日本選手団の結団式・壮行会なら、こうした「アンパンマンの仲間」っぽいコメントに対して、「頑張れー!」「本番が楽しみ!」みたいな平和な反応が返ってきたのでしょうけど、今回はそうならない。

 感染症の専門家の岩田健太郎・神戸大教授のツイートが冷静かつ簡潔で素晴らしかったです。

 「選手たちは気の毒。」で締められています。なんて優しい方なんだ。

 このツイートには心の底から「感動」しました。

 そう、「気の毒」という表現がピッタリなんです。

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の橋本聖子会長、日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長といった、運営側に回ったり政治家になったりした元アスリートが同じような発言をしたのであれば、厳しく責任が追及されてしかるべきと思うのですが、今回のは、現役アスリート、ですからね…。

 ずっとスポーツばかりやってきて超人的な能力を身につけた現役アスリートに「社会情勢や一般常識をちゃんと踏まえて『空気読んで発言しろよな』」って感じで批判を繰り返されることで、アスリートの周りに広告代理店マナー講師みたいなものがびっしりと貼り付き、アスリートの「生の声」が聞けなくなっていく恐れがあると思うんです。

 2010年バンクーバー五輪を機にいろんな意味で有名になったスノーボードの國母和宏さんを思い出しました。

2010年2月9日、國母はスノーボード・ハーフパイプ日本代表としてバンクーバーに向かう際、日本選手団公式ユニフォームを着崩し、腰パン、緩めたネクタイ、またブレザーの前を開け放しシャツの裾も出し、さらにはドレッドヘアに鼻ピアス、サングラスというスタイルで成田空港に現れ、「結果よりも内容。(滑りを見て)格好いいと思ってもらえればいい。最近のスノーボードはすげぇダセえから」と持論を展開し、そのままバンクーバーに向けて出国した。

Wikipedia「國母和宏」より

 この騒動は鮮明に覚えています。不快感は全くなく、「カッコいいなぁ」とすっかりファンになってしまいました。

 1996年アトランタ五輪からオリンピックの商業化が加速したと言われておりますが、日本においてアスリートの言動の炎上は、この2010年バンクーバーが始まりなのかもしれません。

 オリンピックに出るようなエリートは情報発信力も影響力も極めて高いわけで、「それに伴った社会的責任を自覚してもらわねば」という考えも分からなくはありません。

 ただ、こういうのを押し進めいくと、アスリート側もリスク軽減の観点から「感動を生み出すプロ」みたいな演出家の指示通りの言動しかできなくなっていくのではないでしょうか。

 というか、もうそうなっているのかもしれません。

 今回の「感動と勇気を届けたい」は、複数のアスリートがそれぞれ深い考えもなく頭に浮かんだ言葉を口にしたら同じような表現が並んだだけなのか、演出家の振り付けがあったのか、興味あるところです。

 あれが演出家の指示なのだとしたら、炎上を招いたわけですのでプロ失格です。

 「感動と勇気」はおろか、「いとしさと切なさと心強さ」すら生み出されていません。コンサルタント代金は返却すべきです。

 ツイートで岩田教授も触れていましたが、「スポーツの力は偉大」なのはその通りだと思います。

 「感動の押し売り」がイヤなだけで。

 本当にスゴいゲームであれば、「感動を生み出すプロ」の演出がなくたって感動するわけです。

 2019年のラグビーW杯があれだけ盛り上がったのは、演出ではなく日本代表の試合内容が素晴らしかったからです。

 高校野球も、試合を観ているだけなら面白いのですが、「白血病で亡くなったマネジャーに捧げる1勝」とか「ケガでベンチ入りできなかった悲運の元エース」とか、そういうサイドストーリーを押し売りされると、白けるんですよね。

 ひょっとすると、アスリートたちも、「感動ポルノ」の「被害者」、ないしは、「同意をしていないのに出演させられている役者」という点では障害者と同じようなポジションにいるのかもしれない。

 どちらも、「感動を生み出すプロ」が金儲けするためのコマの一つなわけですし。

 「24時間テレビ」に出演する当事者が、番宣で「感動と勇気を届けたい!」って言うのだろうか。

 番宣も含めてここ40年近く観ていないので分かりませんが、そういう演出は「障害者向け」でないような気がします、なんとなく。

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