コロナから考えた〜刺激的な「ニュース」には気を付けましょう
新型コロナウイルスをめぐり、朝日新聞デジタルに掲載された記事「子どもがカラオケ・ファミレスに 高齢者が苦情、親は…」(クリックすると元記事に飛びます)がネットで話題になっております。
「感染拡大防止のため一斉臨時休校となっているのに、子どもたちがカラオケボックスやファミリーレストランに集まっている」という苦情が熊本市教育委員会に寄せられていて、多くは高齢者からーだという内容です。
記事には、「長期に外出させないことでの子どものストレスが心配だ」という保護者の声も紹介されています。
これはショッキングなニュースでした。そういう批判が外部からあることを想定し、予防的に「子どもをあまり外に出さないようにしている」という会社の同僚の話は耳にしていましたが、「子どもが外に集まっているのが問題だ」という批判は妻やぼくの周辺で聞いたことがありませんでした。
このブログでは前回、「ご近所のお年寄りの皆さんは包容力が大きい」という趣旨の文章を書きました。
ぼくがたまたま周辺環境に恵まれているだけなのか、世間知らずなのかもしれませんが、息子についてご高齢の方から苦情を聞いたことはありませんでした。
朝日の記事では、「重症化の恐れが指摘される高齢者」と、苦情を多く寄せている側の高齢者の心情についてもちゃんとフォローしてありました。
その高齢者が目にした若者グループがよほど傍若無人な様子だったのかもしれませんし、何か第三者が想像もつかない特別かつ深刻な事情があってやむにやまれず苦情を寄せたのかもしれません。
とはいえ、報道されている限り、これまで確認された「小規模な感染者集団(クラスター)」はスポーツクラブや飲食店、職場といった「大人が集まる場所」ばかりですし、子どもはもっぱら、すでに感染した親族から「うつされる側」です。
愛知県蒲郡市の50代男性が、検査で陽性と確認された後、自宅待機を要請されたにもかかわらず、「ウイルスをばらまく」と言って市内の飲食店2軒をはしごしていたことも報じられました。
これは刑事事件になりかねない極端かつ悪質な例ではありますが、「外に出てみんなで遊んじゃいけない」と有形無形の圧力がかけられている子どもたちからしたら、「大人の方が社会に迷惑を掛けている」と感じるでしょう。
自閉症児の療育について主に扱ったこのブログが未成年の方の目に触れる機会はほぼゼロだということを承知であえて呼び掛けてみますが、「子ども」たちも、苦情があればどんどんと地元の教育委員会に伝えるといいのではないでしょうか。
高齢者が教育委員会(記事のケースでは熊本市教育委員会)にたくさん苦情を寄せたからこんな記事が出たのであって、そういう意味では「文句を言ったもの勝ち」なわけです。
「新型コロナウイルスへの対応をめぐって子どもたちから多くの苦情が教育委員会にあった」なんて現象が起これば、新し物好きなマスコミが必ず飛び付くはずです。
これは「選挙の投票に行った方が自分たちのためになりますよ」と若い有権者に呼び掛けるのと同じような感覚で提言してみました。
この記事に対するTwitterの反応をみると、「重症化の恐れが指摘される高齢者がなぜ、カラオケ店やファミレスに子どもが集まっていることを知っているのだろうか」という鋭い指摘とともに、「高齢者こそ外出するな」といった強い批判が目立っていました。
子育て世代の人間としては、こうした批判は心情的によく理解できます。
でも、「高齢者vs子育て世代」の対立のように一般化したところで、ただでさえコロナでギスギスした社会をさらにギスギスさせかねない恐れもあります。
高齢者のすべてが記事に出てくるような「クレーマー気質」ではないはずです。
マスコミの世界には、
犬が人を噛んでもニュースにはならないが、人が犬を噛んだらニュースになる
という言葉があります。犬が人を噛むことはあり得る話だけれど、その逆のことが起こったらニュースになるーという趣旨です。
この言葉を先の記事に当てはめてみると、例えば、熊本市教育委員会に寄せられた高齢者の「声」の多くが、
「子どもたちがカラオケ店やファミリーレストランに集まっているのを目にするが、一斉臨時休校で退屈しているのだろう。毎日そんななら問題だけれど、たまには息抜きも必要だよね」と微笑ましく思って見守っている
といった内容だったとしたら、記事にはならなかったでしょう。
たとえ記事になったとしても、自社のホームページに載ってYahoo!ニュースにも転載されてという派手な扱いではなく、「ほのぼのした話題モノ」として紙面の片隅に小さく掲載される程度だったでしょう。
先ほどの「犬が人を噛んでも…」風に表現すると、
お年寄りが子どもに優しくてもニュースにならないが、お年寄りが子どもに攻撃的だったらニュースになる
ってことになるでしょう。
当たり前ですが、すべての子どもがカラオケ店やファミレスに入り浸っているわけではありませんし、すべての高齢者が市教育委員会に苦情の電話をしているわけでもありませんし、すべての50代男性がウイルスをばらまくためにフィリピンパブに行くわけでもありませんし、すべての県会議員がマスクの転売で大儲けしているわけでもありません。
新型コロナウイルスをめぐり、WHO(世界保健機構)が「パンデミック(世界的な大流行)」を宣言しました。
マスコミが大きく扱う(=ニュース価値が高い)話題ほど、「センセーショナル」「非日常」「想像の範囲を超えている」「非常識」な要素が多く含まれておりますし、今後さらにそういうニュースが増えていくでしょう。
条件反射的に他者を攻撃するのではなく、一呼吸置いて立ち止まって考えることが大切だと思います。
最後に、自戒も込めて、エリック・クラプトンがカバーしたブルースの歌詞から引用します。
Before you accuse me
ふじうら.こむ「Before you accuse me(Ellas McDaniel)」より
Take a look at yourself
俺を責める前に
自分を見てみろよ
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