「わが子に特別な才能はなさそうだな」と悟ってからが本当のスタートライン
息子に自閉症という診断名が付いたのは2歳1カ月の時で、7年以上も前になります。
その時のことをはっきりと覚えています。
転勤で赴任先の保健師さんから発達相談を受けるよう勧められ、妻と3人で保健所に行きました。
われわれは、診断を担当するドクターがいる部屋で他の数家族とともに待っていて、順番が来て向き合うなり、ドクターはすぐに「自閉症だね」と宣言しました。
順番待ちをしている時の息子の動きを観察していたため、すぐに診断できたのでしょう。
5秒とかかりませんでした。
保健師さんは「この子は自閉症の可能性がある」と気付いたからこそ発達相談を勧めたのでしょうし、ぼくもネットで事前に調べた情報から「自閉症っぽいよなぁ」とは察していました。
しかし、いざドクターから診断名が告げられると、それを受け止めて消化していくのには時間がかかりますし、しんどい作業でもあります。
今回は、そんなわれわれ家族がどのように診断名を受け止めていったかという「魂の遍歴」についてです。
いやそんな立派なものではなくて、「自閉症児の親あるある」って感じでしょうか。
診断名を告げられたばかりで不安な保護者さんの暇つぶし&気晴らしになればーとの思いから書き進めてみます。
診断を受けたことを親族や友人・知人、職場の同僚などに話すと、「息子さんは特別な才能があるのかもしれないね」とおっしゃる方が一定数おられました。
きっと根がお優しいのでしょう。
で、そんな言葉を間に受けた保護者は何を始めるか。
「サヴァン症候群」という言葉をGoogleで検索します。
ダスティン・ホフマン主演の映画「レインマン」について調べます。
天才的な科学者、アーティスト、アスリート、そして、さかなクン、ファッションモデルの栗原類さん(最近は露出が少ないようですが…)にも関心を抱きます。
さらに、音楽や絵画の才能があったり、年齢不相応に文章が上手だったり思考が深かったりする「奇跡の障害児(者)✨」の保護者さんが書いた本を手に取ってみたりします。
ぼくもそうでしたが、子どもの将来が不安でたまらない保護者はまず、「特別な才能」というパワーワードにすがるようになります。
健常児みたいにいろんなことが平均的にスキルアップはしていかないとしても、ある特定のものに執着し、超人的な集中力で打ち込み、才能の伸ばしていくのではないか、と。
宝くじを買って「3億円当たったら何をしようか」と考えるのに似ています、今考えると。
期待を胸に、いろんな音楽や映像、絵画、本に触れさせ、スポーツ体験などをさせてみます。
息子に関していえば、どれに対してもそれほど興味を示しませんでした。
そこで、「才能が伸びないのは教え方が良くないのかもしれない」と思い直して、いろいろと調べ直したり、「奇跡の障害児(者)」系の本(妻とぼくは1冊も買ったことがないですが)を再び手に取ってみたりするかもしれません。
そんなことを繰り返すうち、だんだん悟るようになります。
「わが子に『特別な才能』はなさそうだな」「宝くじには当たらなそうだな」、と。
ぼくは、ここからが障害児の親としての「本当のスタートライン」なのかなと思います。
もちろん、特に自分から興味の幅を広げることが苦手な自閉症児にいろいろな経験ができる環境を整え、より多くの選択肢を用意するのは、文句なしにいいことだと思います。
時間とお金さえ続けば、お子さんの「負担」が過度でなさそうであれば、才能発掘を繰り返していくのもいいかもしれません。
でも、お子さんと保護者の日常生活に支障が出るほどに時間とお金を費やしてまで続けるものではないのかなと、個人的には思います。
「特別な才能」が見つからなくて他者から抜きん出ることがなくても、自閉症児であるわが子がアートやスポーツ、学問といった分野に興味を持ってくれるようになるのは、無条件で素晴らしいことです。
それによって名声や経済的自立が得られなくても、そうした分野のことに興味を持って取り組むことで、他者との接点が増えることも含め、お子さんの人生がより彩り豊かなものになっていくと思うからです。
では、わが息子はどうか。
「ドアの開閉」「植物への水やり」「干した洗濯物の並べ替え」ぐらいでしょうか、これまで見てきた中で「執着が強くて集中力を発揮してきたもの」というと。
ここ最近は、「自転車に乗る」「食器を洗う」ことに執着を示しています。
綿棒を使った耳掃除を嫌がらなくなりました。
15キロぐらいは平気で歩くことができ、体力はありそうです。
何もかも地味でフツーな感じです。
まあいいか。かわいいし。
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