言葉が使えなくとも意思疎通の手段さえ確保できれば「かんしゃく」は減っていく〜重度自閉症・中度知的障害児の9年半②情緒・感覚

今回は情緒・感覚面について。

 当たり前ですが、「定型発達」の健常児とは全く異なり、発達は不定形でデコボコが著しいです。

 思春期が近くなると新たな「育てにくさ」が出てくると思いますが、今のところは、年々育てやすくなってきています。

 「情緒・感覚面での問題」「できるようになったこと」の二つに分けて書いていきます。

情緒・感覚面での問題

①最初から問題なし

(a)自傷・他害

 現時点まで息子にこの傾向が全くないのは「ラッキー」というほかありません。
 今後も注意深くみていこうと思います。

(b)不眠

 3歳ぐらいまでは午後7時半、小2ぐらいまでは午後8時、小3からは午後9時までにはそれぞれ寝かしつけています。

 1日の生活リズム、特に寝る時間については、妻がすごく気を遣っていました。

 食事、昼寝(小さい頃)、お風呂の時間をなるべく固定し、日中はなるべく体を動かして「疲れさせる」…。
 これらは健常児の親御さんもやっていることだと思います。

 わが家の場合は妻の努力のたまものですが、お子さんの不眠に悩む保護者のお話をうかがうと、これらの思い付く限りの対策をしても「寝てくれない」とのことで、お子さんに合わせた対応法が必要なのかもしれません。

(c)音に対する過敏さ

 ファクス複合機の「カチッ」という着信音をかなり遠くから聞きつけるほど耳はいいのですが、特定の音に反応してパニックを起こすーという傾向はみられませんでした。

 2歳半の頃、「世界一の四尺玉」が打ち上げられる新潟県小千谷市の片貝花火の会場で、ベビーカーに乗ったまま最初から最後まで寝続けていたことがあります。

 あれだけの轟音と歓声が鳴り響く中で気持ち良さそうに寝息を立てる姿を見て、「この子は超人なのかもしれない」と、夫婦で驚き呆れました。

②あっさり消えていったもの

(d)触覚の過敏さ

 2、3歳の頃のほんの一時期、粘土を触るのを嫌がり、無理に触らせようとすると泣くーということがありました。

 妻が ABA(応用行動分析)の手法で少しずつ慣らしていったところ、あっさりと消えていきました。

③ゆっくりと解消していったもの

(e)偏食

 2歳半ぐらいまで、白米しか食べませんでした。
 おかずを一切受け付けず、炊き込みご飯もふりかけもダメでした。

 「アンパンマンの野菜スティックパン」「かにパン」も食べるのですが、これらはあくまで間食という扱いのようで、朝昼晩の3食は絶対に白米という、昭和のおじいちゃんみたいな頑固さがありました。

 大皿から自分の食べたい分だけ取るという食べ方ができないのですが、あらかじめ息子の分を取り分けておけば、何でも食べてくれます。

 ただ、食べる順番が「白米を全部食べる」→「自分用のおかずを一気に食べる」→「おかわりして白米のみ食べる」とちょっと変わっていて、これは直す必要があるのでしょうか。

(f)理由の分からない「かんしゃく」

 かんしゃくが減ってホントに楽になりました。
小さい頃は1時間ぐらいずっと泣いていることもあって、「よく気力と体力が続くなぁ」と感心するほどでしたが。

 今起こすかんしゃくは、「『ご飯を早く食べなさい』とママに注意された時に茶碗をテーブルに強く置き、不満そうな声を出す」「どこかに出掛けたいという希望が叶えられないと分かって大声を出して走り回る」の主に2つで、いずれも理由がはっきりしていますし、気持ちの切り替えに5分もかかりません。

 かんしゃくが収まるまで放っておくか、「今日はもう遅いから出掛けられないけど、土曜日なら大丈夫だよ」などと、希望が叶えられない理由と代替策を示すと早く落ち着きます。

 絵カードや写真カード、後に言葉で要求や希望を伝えることができるようになってからは、格段に減った感じがあります。まあ当然といえば当然なんでしょうね。

 息子は「お腹が痛い」などと体調面を言葉で表現することがまだできなさそうですので、「よく分からないけどいつもと様子が違う」時には体調不良の可能性があるとみて対処した方が良さそうです。

(g)場所見知り、人見知り

 「場所見知り」というものがあることは、息子を育てて初めて知りました。乳幼児の頃はかなり手こずりました。

 児童館や公園など初めて訪れる場所に連れて行こうとすると、激しく泣き叫んでいました。

 また、ベビーカーに乗せて家の周囲を散歩するのが習慣だった頃は、いつものコースから少し外れるだけで敏感に反応していました。

 ゆっくりと慣れて「場所見知り」が克服されると、今度は「人見知り」モードに入りました。

 大人は大丈夫なのですが、同じ年頃のお子さんが一人でもいると、せっかく慣れた場所でも入ろうとしませんでした。

 これも、「その場に1分居ることができたら褒める」から少しずつ時間を長くしていくことで慣らしていきました。

 息子が3歳2カ月の時に沖縄へ家族旅行に行った際には、「新潟空港」「那覇空港」「ANAの機内」「那覇空港のリムジンバス」「宿泊予定のホテル」「国際通り」などの写真をネットで探してカードにして繰り返し見せ、半年前から新潟空港に何度も足を運ぶという準備をしたことで、場所見知りすることなく旅行できました。

④改善の兆しゼロ

(h)自動ドアに対する執着

 家庭療育を始めたばかりの頃はかなり厳しく取り締まりをしていたのですが、目を盗んで自動ドアで遊んでいる時の笑顔を見て、「障害のせいで楽しいことが少ないのだから、ちょっとぐらいならいいか」と容認してしまい、今に至っております。

 自閉症児の療育としては間違っているのは承知の上です。人に迷惑を掛けない、機器に負担をかけない程度にとどめるよう、管理は続けています。

できるようになったこと

①最初から問題なくできた

(a)お風呂に入る

 乳幼児の頃から水を怖がることは全くなく、シャンプーハットを使ったこともありませんでした。

②ABA療育によりできるようになった

(b)靴を履いて外を歩く
(c)帽子をかぶる
(d)爪を切る

 靴と帽子については、必要に迫られていたため、2歳半の頃から妻が教え始めました。帽子については、かぶれるようになるまで半年はかかったようです。

 爪については、年単位の時間がかかりましたが、何とかできるようになりました。怖がる気持ちは理解できます。

③ABAと直接関係なく少しずつできるようになった

(e)順番に並ぶ

 並んでいる列に割り込むことはないのですが、人見知りがあった時代、公園の遊具で遊んでいても他のお友達が近づいてくると逃げてしまい、いつまで経っても遊具を使えないのがかわいそうで、並ぶことを覚えさせました。

 最初は妻かぼくが一緒に並び、次第に離れるようにしていきました。

(f)留守番をする(10分以内)

 息子が「プールに行きたい!」と言い続けていた時に「買い物に行くよ」と伝えたところ、「留守番する!」とかんしゃくを起こして、家で留守番させたら意外にも大丈夫だったーというのが始まりです。

 それ以来、出掛ける理由と帰る時間を伝えておけば、10分ぐらいであれば留守番してくれるようになりました。

(g)一人で寝る

 寝る時はずっと添い寝だったのですが、妻が必要に迫られて試してみたところ、それほど問題なくできるようになったそうです。

 自閉症特有の「律儀さ」からか、ママが添い寝してくれない不満よりも、「午後8時半になったから寝なければ」という生活パターンの方を重視しているからだと思われます。

④意外にも平気だった

(h)注射

 本当に意外でした。小児科の先生が上手なのでしょう。痛みと恐怖に対する感覚が鈍感なだけかもしれませんが…。

⑤ぼくが思い付きでやったら大丈夫だった

(i)耳掃除

 以前、こちらに書きました。

 今では、「耳掃除するよー」と言うと、うれしそうに横になってぼくの膝の上に頭を置きます。猫か。

⑥今後の課題

(j)健康診断(視力検査、心電図など)
(k)歯の治療

 いずれ必要になるスキルで、これから練習をしていかねばなりません。

⑦まるでダメ

(l)髪を切る

 息子が寝てから妻が切っています。この写真のような感じです。

寝ている間に髪を切られる息子
(2020年8月撮影)

 寝返りを打つこともあるので危険な上にうまく切れず、しかも、かなり深い眠りでないとすぐに起きてしまい、作業を中断することになります。

 チップスターにハマっていた頃は、「髪を5回切ったら食べていいよ」と言ってABA的にやっていたのですが、いつまでたっても嫌がります。

 切られている最中に「痛い!」と言うこともあります。いや、痛くはないでしょ。

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