障害があるわが子を家の墓に入れようとしない実の父親〜相模原障害者殺傷事件020

これまでは、死刑囚Uがどのような経緯で重度障害者に対する歪んだ認識を抱き、凶行に至ったかという分析的なものを書いてきました。

 今回は、この事件の関連本に出てきた、さまざまな障害者差別について取り上げます。

 まずは、一番ひどいと思ったやつを。

私の知っている範囲の家族でも、夫婦そろって津久井やまゆり園に一度も来ない家族がいるんです。お父さんなのに、全部お母さんにやらせていて、勝手にしろと。そういうお父さんもいるんです。

で、お墓もそうなんですよ。障害をもった人が亡くなったときに、お墓に入れてくれないんです。これ、ホントです。

私が会長をやっているときに、夜中に「遺骨を持ってどこに行ったらよいでしょうか?」って、電話がかかってきたんです。子どもの遺骨を持って家に帰ったら、「主人が『なんだ、そんなものを持って来て、それをどこかに置いてこなきゃ、家に入れない。もう一緒に帰って来るな』って言われて、会長さん、どうしたらよいでしょう?」って。

これが現実なんですよ、知的障害者の家族の方の。

「季刊 福祉労働155『入所施設の現在ー相模原障害者施設殺傷事件を受けて』」(現代書館)P77~78より引用

 これまで何度も引用させていただいた、被害者の父親でやまゆり園家族会前会長尾野剛志さんの証言です。

 実の父親がわが子の遺骨を「そんなもの」と呼び、「一緒に帰ってくるな」と言うわけです。

 亡くなられたお子さんは、重度の障害を持ったことではなく、こんな父親を持ったことが唯一最大の「不幸」だったのではないでしょうか。

 実の親が子どもを虐待死させる事件がよく報道されていますが、この父親も同じ類の人間といっていいでしょう。

一方で、遺族や被害者家族の言葉を詳しく追っていくと、妙に冷淡な語り口のものもぽつぽつと見られることに気づく。

例えば、「福祉労働」第166号に平岡祐二さんが書いた「一月十六日 第四回公判」傍聴記には、U被告に対して「処罰感情は具体的にない」と語る遺族の言葉が紹介されている。
この遺族は、「三年ぐらい面会には行っていなかった」ことを語っている。

また、U被告に刺されて怪我をした20代被害者の父は、「事件で怪我をしても、会わずに遠くから見守った」と述べている。

「相模原事件裁判傍聴記〜『役に立ちたい』と『障害者ヘイト』のあいだ」(雨宮処凛著、太田出版)P51より引用

 これもかなり衝撃的です。

 「処罰感情は具体的にない」って要するに、自分の子どもを殺した被告が「罪に問われても問われなくてもいい」と言っているに等しいわけで、突き詰めていくと、この遺族は「重度障害があるわが子が生きていても死んでいてもどっちでもいい」と考えているふうにも捉えられます。

 「遠くから見守った」というのも、ひどい言い草です。

 死刑囚Uは「社会の役に立たない重度障害者はいらない」という考えから凶行に走りました。

読み上げられた調書には、一緒に暮らすことに限界を感じたという家族の言葉が多くあり、U被告の主張をはからずも補強してしまうような危うさがあった。

同P52より引用

 公判を傍聴した雨宮処凛さんの言葉です。

 わが子や家族を殺害された遺族が、法廷で加害者に対してこういう態度で臨むのは極めてまれなことでしょう。

姉(当時65)を殺害された男性は、姉の知的障害を理由に、妻との結婚を相手方の親族に反対された。だから、「家族に障害者がいることで差別を受ける現実があることは知っています」。

やまゆり園事件」(神奈川新聞取材班、幻冬社)P165より引用

刑事畑を歩んできた(神奈川県警)幹部の語り口に諦念がにじむ。「この国に、障害者を受け入れる寛容さはあるか。悔しいが、ないだろう」
入所していたきょうだいの存在を、結婚相手にも打ち明けられないままの遺族もいると明かした。
「そういう方々から『名前を出さないでくれ』と頼まれ、実名発表に踏み切るわけにはいかなかった」

同P154より引用

 同じ本から対照的な部分を拾いました。

 上に引用した犠牲者の弟さんは、相手方の親族に障害がある姉があることを伝え、反対されたけれど結婚し、下に挙げた遺族は、障害があるきょうだいの存在を結婚相手にすら打ち明けておらず、事件で犠牲になっても隠し通そうとしているわけです。

 これまで何度も書いてきましたが、やまゆり園を取り巻く環境が特異なわけではなく、重度障害者が入所する大規模施設は全国みんな、「こんな感じ」なのだと思われます。

 神奈川県警幹部の言葉が、あまりにも重いです。

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