大晦日に激しいかんしゃくを起こした理由が10カ月近く経ってやっと分かった

子どもがかんしゃくを起こした時にどう対応すべきか。自閉症児の親はよく頭を悩ますテーマだと思います。

 ABA(応用行動分析)を使った家庭療育の成果と息子本人の成長のおかげもあって、息子はあまりかんしゃくを起こさなくなりました。
 かんしゃくを起こすことがあっても、理由がはっきりしているケースがほとんどですので焦りません。

 これまでの経験では、息子がかんしゃくを起こしてしまう背景を分類すると

①親(周囲の大人)の対処に問題がある
②本人の「わがまま」に近いもの
③避けようもない不可抗力

 こんな感じになります。

 ①は、「『プールに行くよ』と伝えて出掛けたのに施設が定休日で入れない」といった場合です。
 定休日かどうか、事前に調べておくか施設に電話して確認しておけば避けられます。無用な期待をさせた親の責任です。

 ②は、「おかずを全部食べたらご飯をおかわりしていいよ」と伝えていたのにおかずを全く食べず、ご飯をおかわりしようとするので「ダメだよ」と制したら怒り出すーといった場合です。
 ここで折れると、「ママとトトはぼくが怒りだせば言うことを聞いてくれる」という誤った学習をしてしまい、今後の療育に悪影響を及ぼします。

 ③は、「『プールに行くよ』と伝えていたけれど、急に大雨が降ってプールが臨時休業したor突発的な仕事が入ってプールに連れて行けなくなった」といった場合です。
 これは、予定変更の理由を説明した上で、「人生そんなこともある」と理解してもらうしかありません。

 対処法としては、「収まるのを待つ」ことに尽きます。

 ①だと「ごめんね。本当は●●したかったんだよね」と謝りながら、③の場合は「イヤだったね。本当は●●したかったんだよね」と共感しながら頭や背中のナデナデします。

 ②なら、特に働き掛けずに見守ります。本人も「無理なことを主張している」ということが分かっているとみえ、気持ちの整理さえつけば何もなかったかのように再びこちらに近寄ってきます。

 で、かんしゃくを最低限に抑えるコツとしては、

❶ウソをつかない
❷見通しがつかない予定を断定的な言い方で伝えない
❸事前に告げていた予定を変更しなければならなくなったら、なるべく早く伝える

 こんなところでしょうか。

 こうしたノウハウの蓄積により、息子がかんしゃくを起こす頻度は年々減り、かんしゃくを起こしたとしても対処法も確立しつつあります。

 「障害児の親」としての経験値は着実に上がってきておりますが、もちろん、まだまだ分からないことも多いです。

 先日、今度の連休にぼくの実家に泊まりに行こうという話を妻としていたところ、妻が唐突にこう言いました。

去年の大晦日にかんしゃくを起こした理由が分かった!

 昨年の大晦日も家族3人でぼくの実家に泊まりに行きました。
 息子には、かなり前から「31日は、ばばじじの家に泊まるよ」と伝えていたのですが、いざ実家に行くとすぐに帰りたがり、帰れないと分かると、激しいかんしゃくを起こしたのです。

 事前通告もして、当時にスケジュールを紙に書いて示したのにかんしゃくを起こすというのは異例なことで、妻もぼくもかなり戸惑った記憶があります。

「泊まる」って言葉の意味を教えていなかったし、発音は「止まる」と一緒じゃない。それじゃあ、分かるわけないよね

 いや、おっしゃる通り。気付くのに時間がかかりました。日本語は難しい。

 英語のwrong(間違った)とlong(長い)、play(遊ぶ)とpray(祈る)であればネイティブでないと聞き取りにくいけど微妙に発音が違います。
 しかし、日本語の「とまる」は発音が全く一緒で、文脈でどの意味か判断するしかないのです。

 「文脈で判断して」というのは自閉症児には一番苦手なスキルであり、じっくりと教えなきゃいけないものです。

 そう言われると、思い当たることがありました。

 GoToトラベルを使って夏休みに山形県南陽市の赤湯温泉に宿泊する際も、息子に「温泉に行く」「温泉に泊まる」と伝えていました。

 われわれ家族は、休日に日帰り温泉に出掛けることが結構あって、その際には「温泉に行く」という言い方をしていました。

 彼は「温泉に行く」イコール「大きなお風呂がある場所に出掛けて、お風呂に入った後に家に帰る」という理解をしていたはずです。

赤湯温泉の旅館でくつろぐ妻と息子
写真=赤湯温泉の旅館でくつろぐ息子と妻。かんしゃくを「起こす/起こさない」の境界は微妙なところにあるようです=2020年8月、山形県南陽市

 幸いなことに、この時の息子は少し戸惑っていた感じはありましたが、かんしゃくは起こしませんでした。

 「泊まる」という言葉の意味は理解していなくても、赤湯温泉は初めて行く場所でしたし、鉄道でそれなりの距離があったので、「今日は家には戻らないのかもしれない」と彼なりに想像できたのかもしれません。

 しかし、ぼくの実家は近いし、ほとんどの場合は日帰りでしたので、「『とまる』って言われても意味が分からないよ」ってことだったのでしょう。

 そりゃそうだよね。申し訳ない。

 今回、実家に泊まることを息子に伝える際には、このように伝えました。

ばばじじの家に行って、お風呂に入って、ご飯を食べて、ねんねするよ

 かんしゃくを起こすことはありませんでした。

 経験値がまた上がりました。

 しかし、うっかり使っているけれど息子に意味が伝わっていない同音異義語はまだまだありそうです。

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