「ものを投げる」という問題行動を消したら、「ものを並べる」という問題なし行動が出てきた
少し前に「ドアへの執着がいつまでたっても消えない」という趣旨の話を書きましたが、思い返してみると、いつの間に消えていった「執着」「問題行動」もいろいろありました。
「ものを投げる」というのもそうでした。
未満児の頃、近所の児童館に連れて行っても、おままごとセットや積み木をポイポイ投げてばかりでした。
「一般的な遊び方」をいくら教えても変わりません。
力いっぱい投げないのが救いでしたが、それでも近くで遊んでいるお友達にぶつかったら大変ですので、かなり神経をつかいました。
ものを投げるのを注意すると、途端に不機嫌になって帰りたがることが繰り返しあって、「外出が嫌いになると困るなぁ」とも心配していました。
と同時に、ものを投げるのを必死で我慢している息子をみるのも、辛いものがありました。
そこで妻は、児童館やゲームセンターのボールプールにあるプラスチックのボールを「トイザらス」で大量に買ってきて、「このボールはいくら投げてもいいけど、他のものは投げちゃダメ」と教えたのです。
この方法は大成功でした。
階段の上から息子がプラスチックボールを投げて、妻やぼくが下にいてボールを投げ返すーという遊びを家の中で延々と繰り返しました。
朝起きてから夜寝る直前まで、ずっと階段にいました。
妻やぼくが付き合えない時には、一人で階段を上り下りしてボールを投げて拾ってをリピートし続けました。
家で十分に「投げる欲」が満たされているため、児童館などに行っても、おもちゃをほとんど投げなくなりました。
おままごとセットも、ちゃんと使えるようになりました。
また、思わぬ成果としては、階段の上り下りばかりしていたためバランス感覚が鍛えられ、ほとんど転ばなくなりました。
これによって「ものを投げる」という問題行動は完全に消えたようにみえましたが、しばらくすると「例外」が出てきました。
レゴブロックです。
自閉症という診断名が付いた直後、「息子の発達の役に立つかも」と思って買ってきて、目の前でいろんな形を作って見せていたのですが、息子はレゴを投げてばかりでした。
プラスチックボール以外のものを投げるのを見るのは久しぶりだったため、「なぜレゴだけは投げるのだろう?」と不思議に思っていました。
今になれば理解できるのですが、自閉症児である息子は手先が不器用で、レゴを重ねてくっつけることができなかったのです。
重ねて形を作ることができないため、投げて遊ぶしかなかったのです。
この頃、妻は「つみきの会」に入ってABA(応用行動分析)を使った家庭療育を始めており、「ABAでレコブロックの遊び方を教えられるのではないか」と思い付き、教え始めました。
会のテキストに沿った初級編の課題に苦戦している中で、「レゴブロックの使い方」は生活に必須なスキルではなく、教えるテーマとしてはかなり優先順位の低いものでした。
しかし、ABAの考え方を応用して根気強く教えていくと、レゴを重ねることができるようになったのです。
はっきり覚えてはいませんが、3カ月から半年ぐらいはかかったはずです。
そして、レゴが使えるようになったのを機に、「ものを投げる」という問題行動が完全に消えました。
家でプラスチックボールを投げる遊びも、いつの間にしなくなりました。
で、因果関係は分かりませんが、「ものを投げる」が消えたと同時に、今度は「ものを並べる」という行動に熱中するようになりました。
家庭療育で使っている絵カードや写真カード、ジグソーパズルのピース、レゴブロック、絵本など、何でも並べるようになりました。
児童館に行くと、おままごとセットや鉄道模型の線路、さまざまなおもちゃを規則正しく並べるようになり、他のお友達や保護者さんの注目を集めるようになりました。
これは、「ものを投げる」と違って、他人に迷惑を掛ける可能性が低いため、「問題なし行動」といえます。
自閉症児が「ものを並べるのが好き」というのは本やネットで読んで知っていましたが、実際に目の当たりにするとビックリするものです。
「噂に聞いていたのは、これなのか」と。
ただ、この「ものを並べる」ブームも、いつの前に完全に消えていました。続いたのは半年ぐらいだったでしょうか。
4枚目の写真は、自閉症という障害の不可思議さを再確認するために、今も眺めることがあります。
生き直すことができるのなら、自閉症を研究する医師になってみたいです。
このブログを続けているのも、この時に強烈に感じた「えっ…なにこれ?」という気持ちの延長からです。
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