「この子は一生しゃべれないかも」と覚悟を決めた4歳の頃が一番しんどかった〜重度自閉症・中度知的障害児の9年半①言語
最近、「育てるのが楽になったねぇ」と妻と言い合うことが何度かありました。
もちろん、まだ教えなきゃいけないことは膨大にあります。
引き算の概念を理解できていないようだし、教室のガラスは割るし、自動ドアへのこだわりが消える気配は全くないしと、課題を挙げればきりがありませんが、それでも昔に比べればホントに手が掛からなくなりました。
「自分でやりたい!」「一人でやりたい!」が最近の口ぐせで、いろんなことに挑戦する姿勢もみせるようになりました。
こんな未来は、息子に診断名が付いて途方に暮れていた2歳の時には想像がつきませんでした。
息子のこれまでの成長について①言語②情緒③運動ーの3分野に分けて、簡潔にまとめてみよう思います。
いま途方に暮れている保護者の方々の参考になればうれしいです。
このブログを始める前の、息子が7歳半ぐらいまでの様子は、こちらにまとめてあります。
これ以降のことも加えながら、分野別に書きます。
初回は言語について。
①0〜2歳
1歳半の時点で全く発語がなく、保健師さんが1歳半検診で来てくださって、いろいろと相談に乗っていただきました。
2歳1カ月で自閉症の診断名が付き、2歳5カ月でABA(応用行動分析)による家庭療育をスタートしましたが、発語の気配すらみられませんでした。
この頃は「自閉症なんだから、まだ発語しないのは仕方ないのだろう」といった程度の受け止めでした。
②3歳
発語がないのを補うため、「写真カード」「絵カード」を使い始めました。
その日のスケジュールや、本人の「したいこと」「行きたい場所」を尋ねるのに役立ちました。
並べ替えたり、指差しで選んでもらうことで、意思表示ができますし、原始的なコミュニケーションにもなりました。
意思疎通の手段ができたことで、かんしゃくを起こす頻度が減ったようにも感じました。
写真は3歳9カ月の時で、iPad2を使って絵合わせパズルをしています。
絵や写真には興味を示していて、なぜかローマ字がお気に入りでしたが、日本語のひらがな、漢字には関心が薄いようでした。
③4歳
ABAを始めて2年も経つのに発語の気配すらなく、「この子は一生しゃべれないのかもしれない」と覚悟を決めた時期です。
一方で、妻やぼくが言っていることを理解している様子もみられ、文字を教えてキーボードを使えるようになれば意志の疎通が可能になるのではーと考え始めました。
このまま発語がなければ、われわれ家族もFC(Facilitated Communication、ファシリティテッド・コミュニケーション=介助者〔Facilitator〕を経由して行うコミュニケーション)にハマっていたかもしれません。
写真は、当時使っていた絵カード・写真カードです。絵や写真の下にひらがなで説明を書き、繰り返し見せることで、ひらがなも覚え始めました。
④5〜6歳
5歳になって突然、発語が始まりました。
とはいえ、母音優先の発語でしたので、妻とぼくしか聞き取りができなかったと思います。
「ママ トイレ」「とと お風呂に 入る」といった単純な2、3語文ですが、本当に驚きました。
同時に、ひらがなを単独で読めるようになったため、絵カード・写真カードではなく、ひらがなで書いた文字を見せることでその日のスケジュールを示す形に変えました。
写真は6歳3カ月で、小学校(支援学級)に入学する直前のものです。
1週間の日程をホワイトボードに書いておくと、家の中で持ち歩いては眺めていました。
6歳になっても発語の明瞭さという点での進化はほとんどありませんでしたが、しゃべる頻度は増えていきました。
発語できるようになったのが楽しくて仕方ない、といった感じでした。
「細かく発音の矯正をするより、今はどんどんしゃべって自信をつけてもらった方がいい」というセラピストさんのアドバイスを受け、言い直しはさせないようにしていました。
⑤7〜9歳(現在)
ここまで来ると、ゆっくりと進んでいくだけです。
「〜に行きたい」「ご飯が食べたい」といった要求、「〜してから〜する」「〜いらない」といった希望をはじめ、「学校でいい子だった! 自転車に乗りたい」といった交渉(駆け引き)など、バリエーションも増えていきました。
発語の明瞭さについては、まだ聞き取りにくいことはありますが、だいぶ上手になってきました。
写真は7歳3カ月の時、暇つぶしにひらがなのなぞり書きをしている様子です。
視覚優先の傾向があるためか、しゃべるより文字を扱う方が得意のようで、4年生に進級するまでに1年生で習う漢字を全部覚え、今は2年生で習う漢字を妻が教えています。
しゃべっている内容としては、だいたいの感覚ですが、健常児の2歳半〜3歳ぐらいのようです。
まあそれでも、4歳までの頃には今の息子の姿は想像できませんでした。
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