一人カルタ二人カルタ三人カルタ

0歳4ケ月からの3年間を自然豊かな新潟県小千谷市で過ごしたこともあってか、息子は今も外遊びが大好きです。
 Stay Homeできない性分ゆえ、悪天候や「自粛」によって家に閉じこもることは、本人も親も苦痛でしかありません。

 「外で体を動かすのが好き」というのは健康的ですし、親としては歓迎すべきことなのでしょう。

 ただ、息子の場合は、室内で遊べないことの背景に、自閉症からくる「飽きっぽさ」「楽しみ方のバリエーションの乏しさ」があることは間違いありませんので、手放しでは喜べません。

 インドアでも集中できて楽しめるものを見つけることは、彼の感性の幅を広げることにもつながります。それに、親もラクになります。

 これまでは、外に出たがる息子をなだめながら家の中でどうやって過ごそうかと頭を悩ませるぐらいなら、吹雪や風雨に耐えたほうがラクだなという気になっていました。

 インドアで楽しく集中できるものがあれば、もっとラクになります。
 「親がラク」ってのは一番大事な要素です。

 そして、妻の長年の療育の成果ともいえると思いますが、インドアで楽しめるものができました。カルタです。

一人カルタをする息子
写真=自宅で「一人カルタ」をする息子。楽しそうです=2020年3月、新潟県新発田市

 3人以上揃えば、普通にカルタ遊びをします。
 しかし息子は、「二人カルタ」「一人カルタ」でも十分に楽しそうです。

 「二人カルタ」は、妻やぼくが読み上げ、息子と2人で札取りを競うものです。
 まあこれは理解できます。ぎりぎりゲームとして成立しなくはないです。

 しかし、「一人カルタ」となると、息子が一人で札を並べ、自分で読み上げ、自分で取るーという自己完結的な儀式のようなものです。

庭のピクニックテービルに水を入れた容器を並べる息子
写真=水を入れた容器を庭のテーブルの上に並べる息子。今でもやはり並べることが好きなようです=2020年6月、新潟県新発田市

 でもまあ、人形を相手に「一人ままごと」をする女の子もいるでしょうから、これもアリかもしれません。
 3歳の時、カードやおもちゃを並べることに執着した時期がありましたが、もともと並べるという作業が好きなのでしょう。

 そんな遊びを繰り返しているのでかなり上達していて、「三人カルタ」で妻やぼく、実家の父母が手加減なしで対戦しても、ほぼ息子が勝ちます。

 ですので、支援学級でクラスメートとカルタ取りをすると、圧勝してしまうようです。
 その場が微妙な空気になることは容易に想像できますが、彼に「場の空気を読む」「遠慮する」などという発想はまるでありません。

 彼はこれまで、団体競技の玉入れや綱引き、リレーで「勝って喜び、負けて悔しがる」姿をみせたことはありません。

 運動会の徒競走で1位になったこともありません。ちゃんと走ればそれなりなのですが、「他人と競い合う」という発想がなかったのだと思います。

 そんな息子が、カルタで勝つとうれしそうなのです。「勝ち負け」の概念を自然に学んだようです。

 「インドアでの暇つぶし」プラス「ひらがなの復習」のつもりで始めたカルタに、思わぬ教育効果がありました。

 ここ1ケ月ぐらいは気候が安定していたので外遊びが中心でしたが、われわれ家族が暮らす新潟県は少し前に梅雨入りしましたので、久々にカルタの出番もありそうです。

 しかし、大人が手加減なしにやっているつもりなのに息子に負けてしまうのは教育上、あまり良くないような気がします。
 負けて悔しがる経験は重要です。

 そのために、息子がいない間に「一人カルタ」をやって札を覚えてしまおうかとも考えましたが、それは文字通り「大人気ない」ですので、やめておきます。

 息子が使っているカルタは「おはなしかるた」(チャイルド本社)、「キンダーせいかつかるた」(フレーベル館)、「しぜんかんさつかるた」(ひかりのくに)、「ふるさと自慢新潟かるた」(新潟ふるさと自慢かるた実行委員会・新潟日報社)の4種類です。しかし妻もよくこんなに揃えたなぁ。この他にお隣・群馬県の「上毛かるた」もあるそうです。いずれは百人一首で遊べるようになればいいなと思っております。人間関係の幅を広げるのにも役立ちそうですし。

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