自閉症と音楽について

息子は就学前から週1回、ミュージックセラピー(音楽療法)を受けています。ハワイで活動していた先生が近くで教室を開いていて、市内の障害児向け支援センターで一緒だったお子さんも何人か通っています。

 言語でのコミュニケーションが苦手な発達障害児は、音楽療法を通じて自分の感情を表現するのに役立ちますし、「他人の話を聞く」「順番を守る」など社会性も身につけることができます。

 発達障害児だけでなく、児童養護施設で暮らすお子さんや高齢者、悲惨な事件や大災害の被害者・被災者の方が、心の傷を癒して日常を取り戻していくためにも有効なアプローチ法です。ご興味を持たれた方は、息子の先生が運営に関わっているSounding Joy Japanのサイト(Facebookページ)をご覧ください。

 ミュージックセラピーを知る前から、言葉がほとんど喋れない息子に「音楽が何か役立つのではないか」という発想はありました。

 「自閉症の天才音楽家が奇跡の旋律」みたいなのはどうでもいいのですが、音楽を通じて人間関係に幅ができたり、音楽が好きになって彼の人生が少しでも「彩りあるもの」になればいいな、と。

 そんな思いから、自閉症の診断が出た2歳の頃から、寝る前にはYouTubeでバッハを流し、ヤフオクで買った中古のキーボードを室内に置くようにしました。
 そうした生活に、途中からミュージックセラピーが加わったのですが、音楽に極めて高い興味を示すわけでもなく、才能の片鱗をみせるわけでもありませんでした。

 でも、音楽は普通に「好きになった」ようで、セラピーや支援センターで習った童謡を口ずさむようになりました。

 自動ドア以外のものに興味を示さず、子音の発語が苦手で何を言っているのか分からない状態でしたから、これだけでも大きな進歩です。
 現在は、発語は相変わらず曖昧ですがよくしゃべる子になり、ABA(応用行動分析)のセラピーとともに、音楽も成長を促してくれたのではないかと思っています。

 息子は数カ月前から米津玄師の「パプリカ」がお気に入りで、妻に仕上げの歯磨きをしてもらう際にいつも聴いていました。小学校のダンスでパプリカが使われ、そこで知ったようです。

 それがここ2週間、息子は「パプリカ」を超える音楽を見つけました。こちらです。

 歌っているのは、「沖縄民謡界の大御所」とされる護得久 栄昇(ごえく・えいしょう)さんです。本土ではご存知ない方がほとんど(失礼!)だと思われますので、Wikipediaから引用します。

沖縄県で活動を展開する芸能事務所FECオフィス』の中核部門「演芸集団FEC」に所属する漫才師『ハンサム』のボケ担当・金城博之(きんじょう ひろゆき)の持ちネタの1つ。キャラクターは、金城の相方であるツッコミ担当・仲座健太の考案。

Wikipedia「護得久栄昇」

 ぼくがスマホでこの曲を流していたら、息子がスマホを奪って何度もリピートで再生するようになり、最近は「ちゃめ、ちゃめ あっちゃめ〜」と口ずさむようになりました。
 パプリカの歌詞はすべて暗記したようで、今でも時折、呪文のように口にします。そこに「あっちゃめ〜」が加わったわけです。

 寝る前にバッハを流す習慣は、だいぶ昔にやめました。息子がクラシック音楽に何ら興味を示さないのは、ぼくも妻も日常的にクラシックを聴かないわけですので、まあ当然といえば当然ですね、考えてみれば。

 われわれ家族が暮らしているのは沖縄県ではありませんので、いくら息子が外で「あっちゃめ〜」と言ってウケを狙っても、何のことか誰も分かりません。今後、護得久先生が世界的に有名になることがあれば、「日本国新潟県で初めて護得久栄昇の魅力に着目した自閉症児」ということで名乗り出ようと思っております。

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自閉症と音楽について” に対して2件のコメントがあります。

  1. Sounding Joy JAPAN より:

    音楽療法をご紹介いただき、ありがとうございます!これからも、新発田で、息子さんと一緒に成長して行きたいです。いつもリアルで読み応えのある記事、楽しみにしています。

  2. 69annee より:

    先生、ご無沙汰しております。数時間前、息子はビリーブという合唱曲を妻のスマホで聞いて口ずさんでいました。
    新型感染症の影響で人々の心に余裕がなくなり、ギスギスしております。音楽療法による「癒し」が強く求められている時だと思います。
    健康を第一に、一層のご活躍を!

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