政権与党の国会議員からLGBTの人を差別するような発言が止まらない理由を考えてみた

LGBTといった性的少数者に対して、自民党の衆院議員が党内の会合で「生物学上、種の保存に背く。生物学の根幹にあらがう」といった趣旨の発言をしたことが少し前に問題になっていました。

 日刊スポーツのサイトに「LGBT『生物学上、種の保存に背く』簗和生衆院議員、自民党会合で発言」と題して掲載されていますが、元は共同通信が配信した記事のようで、多くのメディアで報じられています。

 この発言に対しては、当事者や支援団体が自民党に抗議し、与党内からすらも批判が出ており、取材に対して生物学者が「明らかな誤り」「差別を助長しかねない」とコメントしていた記事もありました。

 「兵庫県立 人と自然の博物館」研究員の京極大助さんのツイートを引用させていただきました。このツイートについても、共同通信が記事にしていました。

 今回の騒動の問題点が簡潔に指摘されています。

 「社会に貢献していない」などという自らの歪んだ見方にもっともらしく理屈をつけて他者の人権を踏みにじることを正当化するというと、相模原児童殺傷の植松聖死刑囚が思い浮かびますが、簗和生氏衆院栃木3区選出の国会議員です。

 ぼくはこの辺の地理に疎いですが、栃木県の大田原市・矢板市・那須塩原市・那須烏山市・那須郡にお住まいの有権者の方々が「自分たちの代表に最もふさわしいのはこの人だ」と選んで国政に送り込んだ代議士なわけです。

 ちなみに、「LGBT『生物学上、種の保存に背く』簗和生衆院議員、自民党会合で発言」という記事で併せて紹介されている、「(性的少数者を巡り)ばかげたことがいろいろ起きている」と発言した山谷えり子参院議員(元拉致問題担当相)は比例代表(全国区)性的少数者のカップルに関し「生産性がない」と月刊誌「新潮45」2018年8月号に寄稿した杉田水脈衆院議員は比例中国ブロックからそれぞれ選出されています。

 簗氏は男性ですが、こちらの2氏はいずれも女性です。自民党所属という共通点はありますが、こうした考えに性別は関係ないようです。

 しかし、国会議員(しかも与党)からなぜ、こうした差別的な発言が相次ぐのか。

 動物行動学研究家でエッセイストの竹内久美子さんが講談社「現代ビジネス」に掲載した記事「『LGBTは生産性がない』は生物学的にも間違っていることを示そう」がとても示唆に富んでいました。

 竹内さんの記事は、18年の杉田水脈衆院議員の論文に対するもので、「LGBTカップルは『生産性』がない」という主張は生物学の知識に照らして誤っているーということが書いてあるのですが、その論考に入る前段階にこんな記述があります。

しかし、杉田論文の全文を読んでみると、おおよそ次のようなことが述べられていることには注意しておいてもよいのではないかと、私は思う。
ーーまず、リベラルなメディアがLGBTの権利を認め、支援する動きをさかんに報道するが、それはおかしいのではないか。
ーー彼らは、日本においてそんなに差別されているわけではない。
ーーリベラルなメディアは彼らの生きづらさを社会制度のせいにしている。
ーー生きづらさを行政が解決しようとすると、お金が動く――。

現代ビジネス「『LGBTは生産性がない』は生物学的にも間違っていることを示そう」より

 ここで分かるのは、与党・自民党の国会議員である杉田氏が、LGBT問題を「政治闘争の場」と捉えていることです。

 ここで言うところの「リベラルなメディア」は政敵である「リベラルな政党」と組んで、私利私欲のためにLGBT問題を利用し、日本社会において「それほど差別されていない」のに大げさに騒ぎ立て、票やカネを得ようとしているーそんなふうに危機感を抱いていることが伝わってきます。

 確かに、「リベラルなメディア(野党)」には、そういった功利的な側面もあるかもしれません。

 しかし、この杉田氏をはじめ、先に挙げた簗、山谷両氏にももちろん、政治的な主張の背景に「功利的な側面」はあるはずです。

 LGBTを差別するような発言を支持する有権者は一定数おり、そう発言することは「票」や「カネ」といった利益につながることを意識していると考えられます。

 長く政権与党を続けている自民党には、多種多様な分野の「利益代表」がおり、一部の議員によるこうした過激な発言が自身の支持基盤にはマイナスとなる議員もいるでしょう。

 そして、あまりに世論の風当たりが強くて党としてマイナスになると執行部が判断すれば、そうした一部議員を注意したり処分を下したり離党・除名に追い込んだりということも行われるはずです。

 しかしこの人たちは現時点で、自民党を追い出されてはいません。

 ファシズムについて心理学的に分析したドイツのエーリッヒ・フロムの「権威主義的パーソナリティ」という言葉が頭に浮かびました。

フロムはこれを権威ある者への絶対的服従と、自己より弱い者に対する攻撃的性格の共生とした。思考の柔軟性に欠けており、強い者や権威に従う、単純な思考が目立ち、自分の意見や関心が社会でも常識だと誤解して捉える傾向が強い。外国人や少数民族を攻撃する傾向もよくある。

Wikipedia「権威主義的パーソナリティ」より

 植松死刑囚を挙げるまでもなく、「社会に貢献しているかどうか」といった曖昧な尺度を持ち出して人権を制限したり否定したりする考え方は必ず、障害者に向かうはずです。

 先に挙げた3人の国会議員を個人攻撃するのは簡単ですが、3人の後ろに控えている「そうした考え方に賛同して票やカネを投じる有権者たち」こそが向き合うべき対象だと思います。

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