息子が「一人で学校に行きたい!」と言い出したけれど、親同伴でないと心配なことがまだあって踏み切れない

半年ぐらい前から、息子は口ぐせのように「自分でやりたい!」「一人でやりたい!」と言い続けるようになりました。

 9歳にしてようやく自立心が芽生えてきたのかもしれません。いいことです。

 息子が自分から「やりたい」と言い、ここ半年で実際にさせてみたのはこんなことです。

お米をとぐ
電子レンジで冷凍ごはんを解凍する
洗剤をつけて食器を洗う
食器を拭いて戸棚にしまう
フライパンで野菜を炒める
洗濯物を干す

 すべて家事で、いずれもぼくがやっているのを見て真似し始めたものです。

 父親に似て家庭的なのでしょう。いいと思います。

 そんな息子が最近、「一人で学校に行きたい!」と言い出しました。

 次はそう来たか。

 家から学校までは歩いて4〜5分。押しボタン式の歩行者信号が付いている横断歩道を1回渡るだけで、交通事故に巻き込まれるリスクはかなり低いです。

 ただ行き来するだけなら、一人でも全く問題がありません。

 それでも、登下校に妻やぼくが同伴し続けているのは、息子の対外的なコミュニケーション能力がほぼゼロだからです。

 家族や先生、支援員さんといった「なじみのある大人」に自らの要求や希望を伝える際にはコミュニケーション能力をフルに発揮するのですが、ご近所さんやクラスメートに声を掛けられても、なかなか言葉を返すことができないのです。

 もっとも、これは致し方ない部分もあって、息子の特性をよく知っている「なじみのある大人」は、息子が聞き取りやすいようにゆっくりとはっきりした口調で話し掛けるので返しやすいのですが、そうでない大多数の方々に声を掛けられても、息子はおそらく、何を言っているのか聞き取れていないのだと思われます。

 ありがたいことに、息子を連れて登下校していると、結構いろんな方が声を掛けてくださいます。

 ご近所の方だけでなく、「あっ、●●(息子の名前)さんのお父さんだ」と言って話し掛けてくれ、学校での息子の様子を教えてくれる子もいます。

 こうした関係を築くことができたのは、この4年間、登下校時に妻が息子のコミュ力を補ってきたからです。

息子が通う小学校内に張ってあった「あいさつレベル」と題した掲示物

 この写真は、息子が通う学校内で見かけた「あいさつレベル」と題した掲示物です。

 いつか療育に使おうと思って写真に撮っていました。

 よくできています。ABA(応用行動分析)的なスモールステップに分解してあるのが素晴らしい。

 しかし、このレベル設定は健常児向けであって、重度自閉症児の息子にこのまま当てはめるのは無理があります。

 息子用に、レベル設定を変えて作ってみました。

レベル1:あいさつされたら、あいさつします
レベル2:あいさつといっしょにえしゃくをします
レベル3:目を見て、あいさつといっしょにえしゃくします
レベル4:笑顔であいさつします
レベル4:あいさつを、自分が先にします

 「いっしょにえしゃく」「目を見て」は外形的なものですので、「こうするんだよ」と根気よく教えればできるようになるかもしれません。

 その行為が相手から「心がこもっているように見えるかどうか」は措くとして。

 これらに対し、健常児向けだとレベル2の「自分が先に…」、レベル3の「笑顔で…」はいずれも、息子にとって非常に難しいことです。

 「自分が先に…」が難しいのは、範囲を教えるのが困難だからです。

 「家の外に出たら、見掛けた人全員にあいさつしなさい」と教えるのが一番ラクですが、非現実的です。

 数が多すぎますし、道路の向かい側を歩いている人にもあいさつする必要があるのか、自転車で向かってくる人は、信号待ちのドライバーにはどうなのか…などと考えていくと、とキリがなくなっていきます。

 「知っている人には全員あいさつしなさい」と教えたとしても、かなりの人数になるでしょうし、登下校中に見掛けた児童すべてに「おはようございます」とあいさつしたとして、必ずしも相手にプラスの印象を与えないような気もします。

 「コミュニケーションが苦手でしゃべらない子」が、「コミュニケーションが苦手で積極奇異な子」にイメージが変わるだけで。

 「先生全員と親しい子にあいさつしなさい」と教えた場合、「親しい」の範囲で迷うはずです。親が「自分からあいさつをする親しい子リスト」を作って覚えさせるという、よく分からん作業をしなければならなくなります。

 また、「笑顔で…」は、「表情を作る(愛想笑いをする)こと」を教え、「作った表情が自然に見える」ように練習することが必要となるため、これには非常に難しいと思われます。

 これは親バカを承知で書きますが、息子の笑顔ってホントに素晴らしいんです。

 心の底から楽しいと思っているんだなというのがストレートに伝わってくるんです。

 だからこそ、いくら円滑なコミュニケーションのためとはいえ、息子に「表情を作る(愛想笑いをする)こと」を教えるのには抵抗があります。

 「常に笑顔でいるように仕向ければいいじゃないか」という考えもあるかもしれませんが、それも違うような気がするんですよね。

 笑顔ではなく「柔らかな表情」なら違和感ないのだろうか。しかし、そもそも「柔らかな表情」って何だろう。考えるとキリがなくなります。

 ということで、息子を一人で登下校させるのは、まだ心配ですのでやめておきます。

 息子用あいさつレベル3=「目を見て、あいさつといっしょにえしゃく」まで進んだら、大丈夫な感じもします。

 しかし、これから練習していったとして、小学校卒業までに「息子用レベル3」に到達できるかどうか、自信はありません。

 でもまあ、練習を始めてみますか。

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