山形県南陽市の居酒屋で出会ったオッサン3人組の優しさに感激する〜GoTo赤湯温泉2泊3日①
息子の夏休み開始に合わせ、2泊3日で山形県南陽市の赤湯温泉に行ってきました。
片道で2時間半ぐらいの列車(電車ではなく)旅でした。息子が最後までおとなしく乗っていられるか少し不安でしたが、何らトラブルはありませんでした。
楽しくてハイテンションになって声が大きくなることはありましたが、あれぐらいなら許容範囲内。やればできんだね。
旅館は「夕食なし朝食あり」のプランにしました。赤湯の温泉街に飲食店が多いことはネットで調べて把握していたため、夜の飲食には困らないだろうと。
行く前から「赤湯 居酒屋」「南陽市 飲食店」といった検索ワードで何十回となくググり、お店の名前には詳しくなっていました。
温泉旅館の夕食って品数が多くて豪華で、浴衣のまま飲み食いして、ベロベロに酔っ払っても部屋まで這っていけばOKですので、夜を旅館内で完結させる分には最高ですが、周囲に温泉街がある場所だとやっぱり、「どこか外に出掛けたいな」と思います。
夜の温泉街を歩くのって、楽しいじゃないですか。
今回はその選択が大当たりでした。初日の夜に素晴らしい出会いがあり、もうそれだけで「赤湯最高!」「山形の人は素晴らしい!」という気持ちになりました。
初日の夜に行ったのは、旅館から歩いて3分ぐらいにある「おでんとおにぎりがウリの居酒屋」(ネット情報によると)でした。
われわれ家族がその居酒屋に入ったのは午後6時半ごろ。お客さんは2組ぐらいしかおらず、広い小上がりの隅に案内されました。
「平日だしコロナもあるし、飲みに出る人が少ないのかな」と最初は思ったのですが、どんどんお客さんが入ってきました。
地元民御用達の人気店のようです。料理はどれも美味しい。これは「大当たり」を引いたな、ラッキー。
そのオッサン3人組がお店に入ったのは、われわれが入店して40分後ぐらい、小上がりがほぼ満席になった頃でした。隣のテーブルに案内されました。
見た感じで年齢はぼくより何歳か上ぐらい、皆さん腕っぷしが強そうです。
3人ともこのお店の超常連のようで、店のマスターや他のお客さんと親しげに話し掛けていました。
そして、変わった雰囲気の男の子を連れた観光客の夫婦が物珍しかったのか、われわれにも声を掛けてくれました。
「どこから来たの?」「どこに泊まってるの?」に始まり、「子どもにはスポーツをやらせた方がいい」「オレがスキーを教えてあげるから、冬に息子さんを連れてきな」などなど。
店員さんに「こっちに付けてくれ」と言って地酒やおつまみを持ってきてくれたり、「坊や、食べたいのを何でも注文していいよ」と息子に声を掛けてくれたりと、ものすごい歓待ぶりでした。
3人のうち、ぼくのそばに座った方は、地元の建設関係の社長さんとのことで、
今日、21歳の娘の就職が決まったんだ。いろいろあって、やっと決まったんだ
とおっしゃっていました。「いろいろあったんだ」という言葉を噛みしめるように何度も何度も繰り返していました。
「いろいろあった」娘さんが就職を決めたということですので、親として感慨もひとしおでしょう。
就職イコール自立という側面もありますし、子育ての苦労が多かった分、喜びも大きいはずです。
初対面の観光客であるわれわれをこんなに歓待してくれるのは、「幸せのおすそ分け」なのかなぁと思いました。
なんだかぼくもうれしくなってきました。
「今日は記念すべき最高の日ですね」などを相槌を打ちながら、「わが息子が一般企業に就職するのはほぼ不可能だとしても、働ける福祉作業所が決まれば同じような気持ちになるのかな」などとぼんやりと考えていると、社長さんは「いろいろ」について、具体的に話し始めました。
うちの娘、障害があるんだ
そうでしたか。この子も障害があるんです。重度の自閉症です
分かってるよ
社長さんは、パッと見て息子の障害を見抜いた上で、歓待してくださったようです。
この方たちと「合流」したのは、店に入って40分ぐらい。妻とぼくは生ビールを2杯ずつ空けて日本酒の2合徳利をチビチビとやり始め、息子は3個頼んだおにぎりの1個目に手を付け始めた頃でした。
われわれ家族の居酒屋飲みのパターン的には「終盤戦」、頑張ってせいぜいあと20分。息子は残りのおにぎり2個を食べ終われば、「帰りたい」と主張してくるはずでした。
なのですが、この日は、社長さんとの話が盛り上がったこともあって、3時間近くも店に居続けることができました。新記録です。
そして、居続けることができたのは、社長さんと一緒に来店したお二人(この方たちも社長さんっぽい感じでしたが)のおかげだったのです。
もう一人の方は、「何か食べたい?」「タッチしよう」「腕相撲しよう」などと、2時間近くずーっと息子に話し掛けていました。
息子は、初対面の大人に話し掛けられても、ほぼ返答はできません。
いつものように今回も、この方が話し掛けてもずっと無反応でした。
それでも、何度も何度も話し掛けてくださるうち、息子が少し反応できるようになっていました。
子どもに話し掛けて反応がないと「可愛くない子どもだ」「親のなっていない」と言ってくる人もいるかもしれません(面と向かって言われたことはないです)し、反応がないのに繰り返し声を掛けるのには忍耐力がいります。
「息子のことを気にかけてくれて、ありがたいなぁ」「息子が無視しているみたいで申し訳ないなぁ」と恐縮しながら様子を眺めていたのですが、しばらくすると分かりました。
この方も、息子に障害があることを最初から分かっていたんだ。
3人目の方は、ほかの常連さんとずっと楽しそうに話しながら、「あんまり酒を注ぎすぎちゃダメだぞ」などと言いながら社長さんとわれわれ夫婦の会話に交じったり、「何か食べたいものはない?」と息子に声を掛けたりしていました。
息子としては、おにぎりを食べ終わったので早く旅館に帰りたいのに、ママとトトは知らないおじさんとずっとしゃべっているし、別の知らないおじさんには話し掛けられるしで、かなり戸惑っていたのだと思います。
ママとトトを困らせて注目を集めようと考えたのでしょう、席を立って小上がりをウロウロしたり、大きな声を出したりするようになってきました。
こういう場面には慣れています。周囲から息子に好奇の視線が集まり、すぐに「ああそういうことか」とばかりに何事もなかったかのように視線を逸らすのが、いつものパターンです。
しかし、この店のお客さんたちはみんな、ニコニコしながら息子を見守っていたのです。
オッサン3人組は、早い時間から別の店で飲んでいたようで、おつまみにほとんど手をつけないまま、2時間ほどで先に帰って行きました。
なんと優しくて、パワフルで、粋なオッサンたちなのでしょうか。
妻と「最初の夜からこんなスゴい出会いがあるとは…」などと言い合いながら、おごっていただいたざるそばを完食し、宿に帰りました。
われわれ家族にとって、赤湯温泉=南陽市=山形県のイメージは完全にこのオッサン3人組になってしまいました。
素晴らしいという以外にありません。
その恩返しの意味も込め、赤湯温泉には必ず再訪します。
2日目の夜に行った店はイマイチでしたが、そんなことが全く気にならないほど、初日におじゃました「山映」というお店と、そこで出会った方々のインパクトが強かったです。
常連客の多くが一升瓶のボトルキープをしているのには驚きました。ボトルキープの期間はだいたい半年でしょうから、半年で一升瓶を空ける自信がある人ばかりということですから。地元民に愛されている店だということが伝わってきます。
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