自らを「強者」と同一視して貧困者を軽蔑したり障害者をバカにしたりする「持たざる者」たち〜やまゆり園障害者殺傷事件より007

前回は 「障害の社会モデル」について書きました。

 メーデーのデモに参加したフリーターが「生きさせろ!」と叫んだのが2006年、この事件が起きたのがちょうど10年後の2016年。そこから5年余りが経ちましたが、日本の貧困化はさらに進んでいると実感します。「生理の貧困」という言葉すら出てきました。

いま貧困問題の当事者で支援が必要な人たちって、SNSでも私や「住まいの貧困」に取り組む稲葉剛さんなどはフォローせずに、堀江貴文とか、元ZOZOTOWN社長をフォローしているんですよ。
典型的な「持たざる者」であればあるほど、強者と同一化していくので、貧困者を軽蔑したり、障害者をバッシングしたり。そっちにしか行かない。


季刊 福祉労働167『津久井やまゆり園が社会に残した[宿題]』」(現代書館)p14より引用

 この季刊誌の発行は2020年6月。作家・活動家の雨宮処凛さんと二松学舎大文学部准教授の荒井裕樹さんの対談で、雨宮さんが語った部分です(肩書きは季刊誌から)。

 「障害の社会モデル」に当てはめると多くの日本人同様に「障害者」であり、雨宮さんが言うところの「典型的な『持たざる者』」だったこの死刑囚もやはり、いわゆる「強者」を崇める癖があったようです。

天才・堀江さまも障害者は働くな、無駄と言ってる。より知能の高い人の言葉に耳を傾けるべき

「相模原事件裁判傍聴記〜『役に立ちたい』と『障害者ヘイト』のあいだ」(雨宮処凛著、太田出版)P76より引用

 これは死刑囚の自宅に残されていたメモにあった言葉だという。

私は「超人」に強い憧れを持っております。
私の考える超人とは「才能」+「努力」を積み重ねた人間ですので、凡人以下の私では歯が立ちません。
…コンプレックスがバネになって人並み以上の才能をつくるというのは、組織工学の鉄則です。

「開けられたパンドラの箱〜やまゆり園障害者殺傷事件」(月刊「創」編集部編、創出版)P65より引用

 死刑囚が月刊「創」編集部に寄せた手記にあった言葉です。

 特に驚くような内容ではありません。オリジナリティーも感じません。20代後半にしてはずいぶん幼い印象を受けますが、10代半ばの男の子であれば「こんなヤツいるよね」ってところでしょう。

「見た目が良くなればレベルが上がって発言力が増す」との理由から、借金を重ねて目や鼻などを整形手術し、全身脱毛も始めた。
検察側が法廷で示した資料には、15年4月から事件直前の16年6月まで美容外科クリニックに12回通院し、同年3〜6月には別のクリニックにも通ったとの記録が残る。

「やまゆり園事件」(神奈川新聞取材班、幻冬社)p93より引用

 自分は「凡人以下」であって、「見た目がそれほどでもないから発言力が低い」と思っていたことが分かります。

 この事件に関する本の内容を総合すると、この死刑囚は絵が上手ですし、異性との交際経験も豊富で家族と友達にも恵まれていますし、ネット用語で言うところの「リア充」です。

 何年か前に広告業界が作り出した言葉を使うと、「マイルドヤンキー」という感じでもあります。

 2008年に「秋葉原通り魔事件」を起こした男のような、子ども時代の生育環境が過酷だったり対人関係に恵まれず孤独を感じていたりという「負のオーラ全開」な部分は全くありません。

 それにしても、借金を重ねて1年ちょっとで十数回も美容外科クリニックに通院するという行動力にはちょっと感心しました。その行動力ゆえ、最悪の犯罪を引き起こしたわけですが…。

 この死刑囚に対して、発達障害の可能性を指摘する専門家もいましたが、ここで引用した本人の言葉も含めて彼の発言を並べてみると「年齢の割に精神的に幼くて思い込みが激しくてイタい若者」という印象しか残りません。

「トランプ大統領はカッコ良く生きてるな、生き方すべてがカッコいいと思いました」
「見た目も内面もカッコいい」
「カッコいいからお金持ちなんだと思いました」

「相模原事件裁判傍聴記〜『役に立ちたい』と『障害者ヘイト』のあいだ」(雨宮処凛著、太田出版)P97より引用

 なんだろうこの脱力感は。

 「歌手か野球選手になっていれば、こんな事件は起こさなかった」という発言も紹介されていました。

 「歌手か野球選手」ってねぇ、年長組の園児が書く「ぼくの夢・わたしの夢」じゃないんだからさ。

 以下は、死刑囚が津久井やまゆり園に勤務していた頃の回想です。

トランプ大統領は事実を勇敢に話しており、これからは真実を伝える時代が来ると直感致しました。
漠然と時代の変化を感じる中で職員と雑談している時に、深い考えもなく「この人達を殺したらいいんじゃないですかね?」と声にしました。

「開けられたパンドラの箱〜やまゆり園障害者殺傷事件」(月刊「創」編集部編、創出版)P49より引用

 自らも弱者なのに強者に憑依して自分以外の弱者を叩く。顔を突き合わせて実名をさらして暮らす日常生活でこういうタイプの人に出くわすことはほぼないですが、匿名のネット社会では非常に多く見掛けます。

 この死刑囚はきっと、職場の同僚を前に自分の考えを声にしたことで、一線を踏み越えたのでしょう。

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