アラフィフになってもこの界隈ではまだまだ赤子同然
先週、わが家のお隣さん、息子が言うところの「●●(お隣さんの苗字)のじいじ」が亡くなられ、妻と息子はお通夜に、ぼくは葬儀と御斎(おとき)に参列いたしました。
葬儀は平日の午後だったのですが、この日は職場結婚した後輩の結婚祝いの飲み会に出席するため会社に休みを申請しており、その後に新型コロナウイルスの関係で開催延期が決まっていました。
そんなことから、出勤日の調整することなく葬儀への参列がかないました。
延期になった結婚祝い飲み会は、仕事先でお世話になった方々が企画してくださったもので、新婚の2人もぼくも楽しみにしていたのですが、こればかりは仕方ありません。
ちなみに、中止になった理由は、自粛やウイルス警戒ということではなく、感染者が新潟県内で初確認されたことで、企画された方々もわれわれも急に業務が慌ただしくなったからです。
祝いの席ですし、この騒ぎが落ち着いてからの方が心おきなく盛り上がることができるでしょうから、妥当な判断だったと思います。
コロナのせいで社会全体が「中止・延期」一色の中、考えてみれば当たり前ですが、葬儀はそんなこととは関係なく、粛々と執り行う性質のものです。
卒業式や結婚式も「人生の節目」ではありますが、タイミングをずらしたり代替手段で埋め合わせたりすることができなくもありませんが、亡くなられた方とのお別れの機会は一回限りで、そうはいきません。
新潟県新発田市の自宅で暮らし始めたのは、息子が3歳4カ月の頃ですので、隣同士のお付き合いが始まったのはもう5年近く前です。
この家に引っ越してすぐ、妻は息子を連れてご近所にあいさつ回りをし、息子が自閉症であることをお伝えしました。
そんな中でも、お隣の「じいじ」「ばあば」には特に可愛がっていただいておりました。
就学前でまだ発語ができずに奇声ばかり発していた頃、勝手にお隣の庭にふらふらと入り込み、慌てたこともありました。
参列された方や妻によると、前日の通夜で息子は「いい子」だったそうです。
「人が亡くなる」とはどういうことなのか全く理解はできていないでしょうが、お隣の「じいじ」としっかりお別れはできたようです。
ご近所付き合いはほぼ妻に任せっきりにしていたこともあって、御斎への参加にはかなり不安がありました。
「ばあば」はよく存じ上げておりますが、他のご近所さんは「お顔は何度か拝見しておりますが、お名前は…」という状態でしたので。
しかし、心配は無用でした。御斎に参加されたご近所さんの方が、われわれ家族のことをよく知っており、ぼくの方から話題を振る必要はありませんでした。皆さん、70代80代の「人生の大先輩」ばかりです。
お隣の席だったおばあちゃんは、もう90歳近いとのことですが、生き甲斐だというグラウンドゴルフの魅力から振り込め詐欺の撃退法、最後には「美味しい料理だけど食べ切れないんで、娘を呼んで食べさせるわ」と言ってフロントから電話で連絡するなど、とても行動的で話題が豊富でチャーミングな方でした。
われわれ家族について、ご近所の方々が一番最初におっしゃっていたのが、「息子がゴミ出しをしていてエラい」ということでした。
妻の実家には「ゴミ出しは子どもの仕事」というルールがあったとのことで、それに則って妻が息子に教え込みました。
最初の頃は妻がこっそり後ろに付いていって様子を見守っていましたが、ここ1年ぐらいは一人で行って帰ってきます。
「できることが少ない」息子にとって、数少ない「ちゃんとできること」です。
「最近は音の出るものを引きずらなくなったね」というご指摘もありました。
そうでした、そんな妙な「マイブーム」がありましたが、すっかり忘れておりました。
当時の写真がありました。「音の出るもの」とは、雪かきに使う小型のプラスチック製スコップのことです。
道路の雪かきをした後にスコップを引きずって歩き回った(写真左)のが始まりですが、雪が消えても、一人で家の近所を散歩する時にスコップを持ち歩いていました(写真右)。
半袖Tシャツ&半ズボンに雪かきスコップの組み合わせはかなり奇妙です。
年長組の冬から小1の秋までと約1年間も続きましたので、飽きっぽい彼からしたら結構長いマイブームでした。
親としては、「音を頼りに息子の居場所を探せる」というメリットがあったのですが、ご近所では有名だったでしょうし、うるさかったと思われます。すみませんでした。
途中で「ばあば」が席に来られた際、息子が庭に「不法侵入」したエピソードを話題にすると、これまた驚きました。
「ばあば」によると、裏口の戸が少し空いているのに息子が気付き、それを閉めようとして庭に入り込んだのだそうです。
知りませんでした。そういうことだったのか。
確かに、息子は就学前、散歩している時に玄関の引き戸が少し開いている家を見つけると、閉めに行こうとしていました。
これは「閉め忘れているからぼくがちゃんと閉めなきゃ」という親切心というより、自閉症児特有の几帳面さによるものだと思われます。
加えて、ドアが大好きで、歩いていても車に乗っていてもドアばかり見ていますので、すぐに気付くのでしょう。
御斎の席を離れる際、「息子がまた不法侵入してご迷惑をお掛けするかもしれません」と「ばあば」にお声掛けしたところ、「しっかりと成長していますから、もうそんなことはありません」とおっしゃってくださいました。
非常にきっぱりした口調でした。「自分の子をちゃんと信用しなさい」という教えだったと受け止めました。
スコップを引きずりながら散歩していた件といい、 親であるぼくが忘れてしまったことをご近所の方々が覚えていて、「成長したよね〜」「えらいね〜」と息子を褒めてくださったことに驚き、うれしかったです。
多くの大先輩の皆さんに温かく見守っていただき、息子は幸せ者です。
ここで暮らし始めたばかりの頃、いろいろ教えてくださった70歳ぐらいのご近所の男性が「町内では私もまだ若い方です」とおっしゃっていたことを思い出しました。その基準に当てはめれば、ぼくや妻はまだ赤子同然でしょうし、息子に至っては受精直後の卵細胞でしょう。町内の大先輩の皆さんにはとにかく、元気に長生きしていただきたいです。
報道によると、コロナの確定感染者が中国に次いで多い(3月10日現在)イタリアでは、首相が結婚式や葬儀を約1カ月間中止するよう国民に要請したそうです。尋常じゃない事態です。
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